最近のトラックバック

カテゴリー「他のピアニストの記事」の212件の記事

2012年9月23日 (日)

デジュー・ラーンキ コンサート@横浜みなとみらいホール(シナイスキー&東響)

2012年9月18日(月)
14時開演
横浜みなとみらい 大ホール

【前半】
モーツァルト
ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595

【アンコール】
モーツァルト
ピアノソナタ 第16番 変ロ長調 K.570

【後半】
ショスタコーヴィチ
交響曲第4番 ハ短調 Op.43

東京交響楽団
指揮=ヴァシリー・シナイスキー
ピアノ=デジュ・ラーンキ
コンサートマスター=大谷康子

モーツァルトは大好きだけれどショスタコはあまり知らない私含めた2人と、モーツァルトは大の苦手だけれど、ショスタコは大好きな1人。
でこぼこトリオで、横浜みなとみらい に出向きました。

ソリストのデジュー・ラーンキといえば、35年ほども前に、アンドラーシュ・シフゾルタン・コチシュとともに、ハンガリー若手三羽がらすの一人として、もてはやされました。中でもラーンキは、今で言う“イケメン”度№1ということで、人気も№1でした。

そのラーンキもロマンスグレーの温和そうなおじさんとなり、地道な精進による円熟の境地を、一昨年リストのプログラムで堪能させてもらったばかりです。
モーツァルトの演奏はもともと定評があるので、この日のコンチェルトはとても楽しみでした。

第1楽章アレグロ。まずオーケストラが静かで短い序奏から主題を提示します。
音量を抑え、ヴィブラートも控えめの、ピリオド奏法に近い、かなりスッキリとした音の作りです。
短調への、ちょっとした転調が美しい。
モーツァルト晩年の寂とした境地。

そしてピアノが主題を引き継ぎます。

おや、耳がまだ慣れないのか?
ピアノの音が霞に包まれたように、ほんわりと柔らかに、エッジが取れて、丸みを帯びて、控えめに響いてきます。
5分経っても、10分経っても音色が変わりません。耳はもう慣れているはずです。

そう、これがこの日のラーンキの一環した主張だったのです。
まるでまだ楽器ととしての完成をみていない、フォルテピアノを奏でているような、柔らかで優しい音色。
決して焦らず、インテンポで、それでありながら、淀みがない。
サポートするオケも、まったくでしゃばることがなく、響きの少ないピアノの音を消し去ることがない。

展開部に入った時の、オーケストラの息を飲む転調。
時代を100年先取りするような。
いけない、いけない、戻らなくては、とモーツァルト。

ピアノとオーケストラの、いかにもおしゃべりしているような掛け合い。
長調、短調、長調、短調とめまぐるしく曲想は移ろい、クラシカルで美しい室内楽的アンサンブルに、気分はとろけるようです。

主題は戻り、時折ピアノは最初とは違う装飾などもみせる。
カデンツァはモーツァルト
ここでもラーンキは、慌てることはない。
同じソフトな雰囲気を保ちつつ、カデンツァ自体の多少の華麗さを、控えめに演出する。

第2楽章ラルゲット
まずはピアノのモノローグ。
遅すぎず、速すぎず。妙な感情移入もなく相変わらずのインテンポを保つ。
モーツァルトらしい、一番の聴き所ともいうべき、その直後のオーケストラの主題の受け。
盛り上がって、フッとピアノに落とす、そのタイミングや良し。
シナイスキー、わかっています

初見でも弾けてしまいそうな、超シンプルな中間部の旋律。
演奏家の精神がすべて透けてしまう、恐ろしい部分。
ラーンキには、まったく聴き飽きることがない。
適度な集中が保たれ、シンプルな音の運びに、目も耳も釘付けにされる。
淡い弱音なのに、音が、収容2000人余の空間に、幸せに満たされる。

第3楽章アレグロ。モーツァルトピアノ協奏曲最後の境地。
うっかりすると、ただ、明るく軽妙に終わってしかねない、これも危険な楽想。
心配は無用でした。
タッタラッタラーの跳躍は、微塵の軽薄さもなく、一環した丸みのある柔らかなタッチで奏されます。
2回のアイガンクはあまり遊ばずに、モーツァルトから離れず溶けこんでいる。
転調、転調、また転調、色が変わる、雰囲気が変わる、微笑みから悲しさへ、光がさすかと思うと、ほの暗い影が落ちる。
はぁ、天才、モーツァルト。

モーツァルトのカデンツァ
オケのカデンツァへのほわっとした受け渡し方がステキです。
そして、これも転調の嵐。
スケールで上り、下り、上り、下り・・・
たったそれだけなのに、なんという快感。

ロンド主題が戻る。
いよいよ最後の最後、いくぶん、ほんのいくぶんテンポが上がったかもしれません。
ピアノがタッタラッタラー、オーボエがタッタラッタラー。
オケのラスト、クァルテットのように、クラシカルにフワッと落とす終止。
期待していたとおりの終わりかたでした。

ブラボー!

聴いているときはうっとりでしたが、拍手を重ねているうち、なんだか胸がいっぱいになってきて、同じく心ここにあらずといった風のお隣の友達と顔を見合わると、思わず目頭が熱くなってしまいました。

モーツァルトのピアノ協奏曲をライヴでこんなに堪能したのは、ヌーブルジェのジュノムを聴いて以来です。

ラーンキのテクニックは、特にアーティキュレーションが見事で、レガート、ノンレガート、スタッカートなどをきっちり使い分け、モーツァルトの様式感を厳格に表現しようする意識が高かったと感じました。
そして、さしてソフトペダルを踏まないにもかかわらず、終始保たれた柔らかで抑制された響きを作り出すタッチは、驚異的でした。

鳴り止まぬ拍手に応え、アンコールを1曲。
モーツァルトのピアノソナタK.570から第3楽章
コンチェルトと同じ音色を保持したまま、まことにチャーミングで繊細な音楽でした。
ここまでで、すでに大満足のコンサートとなりました。
まだリサイタルのチケットを入手していなかったので、コンサートの後、さっそく購入してしまったのは言うまでもありません。

天へ召されたような気分を味わい、半ば呆然自失の休憩の後、ショスタコーヴィチの第4交響曲に挑みました。
ショスタコは最近でこそ、ピアノトリオやクインテット、クァルテットの一部などを聴くようになったものの、交響曲は私にとってまだまだ馴染みが薄い分野です。
事前にある程度予習していったものの、長いし難解ですから、ほとんど初めて聴くようなものでした。

結果、正直途中落ちかかったところもあったものの、なかなか楽しめたと思います。
大曲ですから、一度で構造が理解できるまではとうてい至るものではありません。しかし、部分部分の旋律や曲想には、惹かれるところが何カ所もありました。
弦がユニゾンでザッザッザッザッザッザッと弾くあたりとか、第3楽章の俗っぽくて人を食ったようなメロディーとか、ラストのツーーーーーーという弦の弱音のベースにチャランだのポロンだのと音を乗せつつ曲を閉じるところとか、おおいに気に入りました。
ピアノトリオや、クァルテットなどでも使われる、いかにもショスタコらしい冷厳に計算尽くされた作りというところでしょうか。
第1楽章の高速フーガも目を見張りました。

大喜びのタコ好き友人の大きなばんざい拍手に応えてシナイスキー氏がこちらを振り向いてくれたのにはびっくりしました。

しかし、また気になるジャンルが増えてしまい、生活を圧迫しそうで怖いものがあります。

前半は天にも昇る心地良い世界、後半は、脳みそを引っかき回されるような刺激的な世界を一度に体験し、友人たちとも感動をともにでき、実りの多いコンサートでありました。

2012年6月16日 (土)

ユジャ・ワンによるツェルニー30番練習曲!?

ちょっと面白い動画がアップされました。

今をときめくユジャ・ワンの子供の頃の演奏。

なんと、ツェルニー30番練習曲です。

指はしっかりそこそこ動いてますが、まさか、今のようなスターになるとは、とても想像がつかないような、普通っぽい演奏なのが驚きです。

ユジャ・ワン ツェルニー30番 No.1
http://www.youtube.com/watch?v=K3v_cWvst_Y&feature=relmfu

ユジャ・ワン ツェルニー30番 No.2
http://www.youtube.com/watch?v=GII-j-6f4LY&feature=relmfu

ユジャ・ワン ツェルニー30番 No.5
http://www.youtube.com/watch?v=_Ecfazn2ap8&feature=relmfu

ユジャ・ワン ツェルニー30番 No.7
http://www.youtube.com/watch?v=DjDGQ_RxQS0&feature=relmfu

ユジャ・ワン ツェルニー30番 No.9
http://www.youtube.com/watch?v=rDDOwwGpqEE&feature=relmfu

ユジャ・ワン ツェルニー30番 No.10
http://www.youtube.com/watch?v=Uop0CLkN3qs&feature=relmfu

2012年6月10日 (日)

ション・ケナード コンサート@ヤマハ・ホール

ボジャノフからハシゴして、銀座ヤマハホールでジュリアード音楽院のチャリティーコンサートを聴いてきました。

おめあては、アメリカの若手、ション・ケナードが弾く、ショパンのピアノ協奏曲第1番(弦楽合奏版)でした。

銀座ヤマハホールは、行ってみたいを思いつつ、なかなか行く機会に恵まれず、ようやく廻ってきました。

ションはアメリカ人にしては小柄、弦楽は前奏を思いっきり省略して、さっそく独奏が始まりました。

やや早めのテンポ、軽快気味の入り。タッチは粒建ちは良いけれど、エッジは丸め。最高音を突き放したのには、ちょっとびっくりしましたが、失敗だったのではなく、後々もこういう収め方だったので納得。

主題はとてもナイーブ。ここで彼のピアニズムがはっきりわかりました。
柔らかなタッチ、ピュアな音色、しかし多少官能的でもある。
おそらく、ヤマハのピアノ(おそらくCFX)、そしてホールも影響していることでしょう。よくマッチしていました。

音楽はよどみなく進み、時折、テンポを落としたり、またエンジンをかけたりと、嫌みのないメリハリもよく効いていました。
そして、急速領域になると、非常に長く感じるフレージングで息もつかせぬ感じなので聴いているほうも思わず前のめりになっていくような錯覚にとらわれます。

下から上昇した最高音は、パンッと跳ね上げるけれど音は濁らない。
上から下降スケールでおりてくるときは、一音目は弱めで入る。
心憎いところでした。

全体に、クラシカルで上品な雰囲気が漂い、運動性も抜群なので、聴いていてたいへんよい気分になれる、秀逸な演奏でした。

昼間のボジャノフのこれ見よがしの刺激的なショパンを聴いたばかりだったので、これぞショパンというような演奏でこの日を締めくくれて、正直ほっとしました。

2012年6月 9日 (土)

エフゲニ・ボジャノフ ピアノ・リサイタル@彩の国さいたま芸術劇場

特異な個性で話題の、エフゲニ・ボジャノフを初めて聴いてきました。

【前半】
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3
ショパン:マズルカ 第21番、26番、32番
          ワルツ 第8番、第5番、第1番
         
【後半】
リスト:エステ荘の噴水
    ダンテを読んで
    オーベルマンの谷
        グノーの歌劇《ファウスト》からのワルツ

【アンコール】
シューベルト/リスト:セレナーデ
ショパン:英雄ポロネーズ

彼の個性は、結局のところ、ノンペダルの短めの乾いた和音連打やグールドばりのノンレガート奏法と、一転音量を落とした滑らかなレガート奏法との対比にありました。

これが成功していたのがベートーヴェン。
ボジャノフはおそらく、とても頭がよくて理知的なのでしょう、構成力が抜群なので、ベートーヴェンで弾き方をいろいろ工夫して対比の妙を演出しても、かっちりとしたソナタの枠の中に収まります。
スピード感、リズム感も抜群です。
そして、四角四面でしかめっ面で、偏執狂的な動機の連続のベートーヴェンから、楽しくも多彩な魅力を引き出し、再構築してみせました。

テンペストとワルトシュタインをつなぐ(19番、20番はソナチネ)ややマイナーで地味なこのソナタが、生き生きと現代に名曲として蘇った瞬間だったような気がします。

対して、ショパンになると、彼の奏法はややあざとく感じ、舞曲6曲も聴くと、同じパターンの表現に正直飽きがきました。

リストは比較的まっとうに弾いていたように思います。
しかし、時折現れる彼独自の乾き奏法が、リストの宗教性の高いこれらの曲の深みにマッチせず、軽薄な印象がしてしまったことは否めません。

メカニックは非常にすぐれていますが、エステ荘をもっと美しく弾けるピアニストはいくらでもいるし、ダンテをもっとデモーニッシュに弾けるピアニストもたくさんいると思いました。

アンコール1曲目は、ゆったりとしたテンポで、内省的に美しさを表現しようという意図はわかりましたが、シューベルトの死の臭いを感じさせるまでにはもう一歩というところだったでしょうか。

2曲目の英雄ポロネーズは、もう、ボジャノフのやりたい放題。
楽譜からどう読み取ったら、ああなるのか理解不能。
ノンペダルの箇所は、音が痩せすぎてしまって、さながら、骸骨のようなポロネーズになっていました。
面白い、と思えるところはひとつもありませんでした。

何はともあれ、いろいろ物議を醸すだけの才能であることはよくわかりました。
彼がただのパーフォーマーで終わってしまうのか、グレン・グールドのように、クラシック・ピアノ界に新機軸を打ち出すのか、興味をもって見守りたいと思います。

2012年4月22日 (日)

ニコライ・ホジャイノフ コンサート@川崎市教育文化会館

ブログを読んでくださっている方に何人かお会いして、少し力が湧いたので久々に書いてみることみしました。

ミューザ川崎が地震でやられて、代替のホールでの東京交響楽団(指揮シャン・ジャン)との競演でした。リサイタルの時にも“小さい”と感じたニコライ君、オケの中を歩いてくると、いっそうか細く見えました。しかしラフマニノフ3番コンチェルトが始まると、その所作は堂々としたものです。

音楽専用ホールでないので、どのくらい音が聴こえるのか心配だったその通りの展開でした。出だしは解釈がナイーブだったこともあり、音が全く響きません。リサイタルで鳴り響いていた左低音もなかなか出てきません。ピアノはスタンウェイかと思って聴いていたら、やはりヤマハだったそうです。

リサイタルを聴かなかった人は、さぞや線が細いピアニストに感じていたことでしょうが、曲が進むにつれ、徐々にピアノがホールに馴染んできて、彼らしい美音や轟音が繰り出されてきました。

第1楽章のカデンツァが始まるころには、どうやらこれは凄いタレントらしいという雰囲気が会場内に満ちてきて、そのカデンツァでは、連なる和音を堂々と鳴らし切り、完全に聴衆の心をつかんだようでした。
単に上手いだけでなく、良いピアニストは“魅せ方”をよく知っています。

彼の弾き方は、しっとり歌わせる時はテンポを遅く、激しい部分は速く、と曲の中で頻繁にエンジンを切り替える表現です。これはラフマニノフの自作自演など聴くとまさに同じ。作曲者の意図を汲みとった熱演といえましょう。

嘆きの第2楽章はむしろしっかりした、しかしレガート十分のタッチで、切々と歌い上げ、終楽章は快速テンポ。オケが遅れそうになると、グイグイ引っ張っていく姿は、ショパンコンクールの時より随分と成長したと感じました。

テンポを上げたり落としたり、大音量をかましたかと思えば、壊れるような美弱音を儚げに奏でる。ショパンコンクールの時のもっさり感もなくなり、すばらしい推進力。コーダになってもピアノの音はオケに埋もれず、しっかりと鳴っている。

いい演奏だと終盤になるにつれ、だんだん気持ちが切なくなってきます。
もっと聴いていたい・・・

アンコールは木曜に続きフィガロ・ファンタジー。持てるテクニックをすべて披露します、ということでしょうか。

大きな才能です。
もうすでにコンサートピアニストとして十分個性を発揮してやっていけそうで、今の個性を保ったままコンクールに勝てるのかどうか、心配です。
これから2つコンクールに参加するとのことですので。

箔をつけながら、無事に大きく育ってくれることを祈りましょう。

2011年12月20日 (火)

アンドレイ・ピサレフ ピアノ・リサイタル@ザ・フェニックスホール

2011年12月18日(日) ザ・フェニックスホール@大阪

ピサレフせんせも生身の人間でしたf^_^;)
でもやはり凄い。

【前半】
ショパン:
 ポロネーズ 変イ長調 Op.53 「英雄ポロネーズ」
 24の前奏曲 Op.28

【後半】
リスト:
 「詩的で宗教的な調べ」S.173から 第3番「孤独の中の神の祝福」
 コンソレーション 第3番
 「巡礼の年第3年」S.163から 第4番「エステ荘の噴水」
 メフィスト・ワルツ 第1番 S.514

【アンコール】
リスト:「愛の夢」3つのノクターン S.541から 第3番 変イ長調
リスト:「パガニーニによる超絶技巧練習曲集」から第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネラ」

チャイコフスキー:「四季」Op.37から「12月:クリスマス」

最近、まとまった文章を書くことが辛くなってきているので、ごく断片的に。

・英雄ポロネーズ
遅れてくる人のために、あえて24の前奏曲の前に入れたとのこと。
指ならしとしては、ちょっと難しい選曲でしたでしょうか。
前日に来日したばかりで、体調もまだ万全でないようでした。
でも、ああいう、前へ前へという推進力を持つ演奏は、好きです。

・24の前奏曲
とても深くてしっかりしたタッチ。
男性的で絢爛豪華なショパンでした。
まだ調子が今ひとつでした。

・孤独の中の神の祝福
曲想のせいもありましょうが、ようやく落ち着かれたようでした。
指が鍵盤に吸い付くようで、柔和で優しく、そして敬虔でした。
胸が詰まりました。

・コンソレーション 第3番
さらに繊細さが増します。
微動だにしない上半身、鉄仮面のような表情、インテンポで端正な表現から、なんという美しい叙情が醸し出されるのでしょうか。

・エステ荘の噴水
コンソレーションからアタッカで始まり、うって変わって明確なタッチ。
まぶしい。目眩く。色が溢れかえる。
ピサレフの美意識の世界に完全に取り込まれてしまいました。

・メフィスト・ワルツ
前半の不調からはかなり立ち直り、超絶技巧を披露してくれました。
圧倒的なディナーミクの変化、色彩感の表出の見事さといったら筆舌に尽くせません。

・愛の夢 3番
早めのテンポで、ベタベタしない爽快な愛の夢でした。

・ラ・カンパネラ
何なのですか、あの音色は!
ピアノの音がほとんど鐘の音に変じきっていました。

・四季 12月
一転、脱力して、軽やかかつナチュラル。
ほのぼのとした詩情。
うっとりしました。

というわけで、機械のように完全無欠だった8月のカワイパウゼでのハーフリサイタルとは違い、技術的にはやや不調だったようですが、後半はだいぶ立ち直っていただき、感動的なリストを聴くことができました。

ずっとリストは苦手で、聴かずぎらい、ということもありました。
今年、アニバーサリーということでたくさん聴くことになり、最後にこんな素晴らしい演奏に接することができ、ようやく、親しくなれたような気がします。

※フェニックス・ホールは小さなホールなので、非常にダイレクトな大音量に包まれます。ややデッドで乾き目の音でした。

※ピサレフの演奏姿勢はまことに美しい。上半身は安定して身じろぎもしない。指は鍵盤に吸い付くようで、全く無駄がありません。弾く姿、指の運動を見ているだけで、その美しさに魅了されてしまいます。

2011年12月 9日 (金)

アレクセイ・リュビモフ ピアノリサイタル@すみだトリフォニーホール(速報)

2011年12月9日(木)

本来今年の4月に行われるはずだったリサイタルでしたが、さすがに震災直後で、延期されていたものでした。

よくぞ「中止」でなく、「延期」として来日してくださいました。
リュビモフさま。
1944年生まれの67歳。かのゲンリヒ・ネイガウスの最後の弟子の一人。

今年最高というべき演奏を聴かせていただきました。
ありがとうございましたm(_ _)m

まずは全体的な感想を。

【前半】
シューベルト:
 即興曲集 D899
  第1曲 ハ短調、第2曲 変ホ長調、第3曲 変ト長調、第4曲 変イ長調

 さすらい人幻想曲 ハ長調 D760

【後半】
シューベルト
 即興曲集 D935
  第1曲 へ短調、第2曲 変イ長調、第3曲 変ロ長調、第4曲 へ短調

【アンコール】
モーツァルト:ピアノソナタ ハ長調 K.545 第1楽章
ドビュッシー:「ピアノのために」第1曲
スクリャービン:「2つの詩曲」から嬰ヘ長調
ドビュッシー:前奏曲集第1巻から「沈める寺」

シューベルト。
これが、シューベルトです。
儚く、切なくも美しい。

常に“死”と隣合わせで、寂しく微笑んでいる。

あふれる涙を止めることができませんでした。

純化した美。
その美は官能的というようなそれではなく、精神がぎりぎりに研ぎ澄まされ、到達したところの美。

できることなら、アンコールではもう一度899-3を聴きたかったです。

だって、ほとんど泣きっぱなしで、冷静に聴けてなかったものですから。

でも、雰囲気もタッチも変わったアンコールもまた素晴らしく、一晩で毛色の違ったコンサートを2つ体験してしまった気分です。
ドビュッシーなどは、どうも表面的な音楽の美しさしか感じず、苦手だったのですが、そうではない、心に届くものなのだ、ということがわかりました。

アレクセイ・リュビモフ。
今後来日の際には、絶対に追いかけて聴きたいです。

2011年12月 7日 (水)

ミハイル・ヴォスクレンスキー ピアノリサイタル@東京文化会館小ホール

モスクワ音楽院教授で、去年のショパンコンクールで話題となったニコライ・ホジャイノフの師匠でもある、ヴォスクレンスキーを初めて聴いてきました。
1935年生まれの76歳、大ベテラン。
ベートーヴェン後期三大ソナタという、奥深いプログラム。

のはずでした。

【前半】
ベートーヴェン:
 ピアノソナタ第30番 ホ長調 op.109
 ピアノソナタ第31番 変イ長調 op.110

【後半】
ベートーヴェン 
 ピアノソナタ第32番 ハ短調 op.111

【アンコール】
シューマン:「森の情景」から第7曲「予言の鳥」
リスト:ハンガリー狂詩曲第11番

ベートーヴェンはとても骨太な音と音楽でした。

後期のソナタ、特にホ長調や変イ長調などは、ベートヴェン的な英雄性や外面的華々しさが蔭をひそめ、内省的かつロマン性をおびてきていますから、そういう面を重視する慈しむように弾くスタイルが多い気がします。

ヴォスクレンスキーは、いや、ベートーヴェンはベートーヴェンなのですよ、とでも言うように、タッチは深く芯があり、響きは朗々として分厚く、スケールの大きさを感じさせる表現をとっています。

そのアプローチはホ長調の変奏曲の盛り上がり部分や、変イ長調のコーダの部分などで、すばらしい効果をあげていました。

また、ハ短調ソナタの第1楽章の音の厚みのある迫力は、なかなか他のピアニストでは体験できない世界でした。
これぞベートーヴェンとでもいうべき、男性的な魅力にあふれていました。
第2楽章は非常にゆっくりとした主題の提示から、徐々に音楽は高揚し、昇天トリルで天の世界へと導いてくれました。

お弟子のホジャイノフもそうですが、少しリズム感がモッサリしたところがあるものの、停滞感を感ずるほどではありません。
また、メカニック的にはお歳がお歳だけに、だいぶ瑕疵はあったと思います。
しかし、それを補ってあまりある音楽性にあふれていました。

と、ここで終わればとても素晴らしいコンサートだったのですが・・・

お歳であるし、ベートーヴェンの後期三大ソナタをやったら、まずアンコールはないだろう、という予想に反し、あっさりアンコールが始まりました。

まずはシューマンの予言の鳥
これは、とても力が抜けていて、音は本編以上と思えるくらいに美しく、曲想も穏やかでしたので、まあ、ベートーヴェンのデザートとして許容できました。

そして、最後がいけませんでした。
なんと、喝采に応えて、リストのラプソディーが始まってしまいました。
別に、リストの曲自体が悪いとはいいません。
しかし、リストのこの手の曲はどちらかというと、芸術性より、エンタテイメントの要素が強い曲。しかも、メロディーは、楽しいけれど、正直お世辞にもスマートとはいえない代物。
酒でも飲んでほろ酔いの状況で、やいのやいのと、聴きたいような曲です。

半年前からチケットを用意し、年末にベートーヴェン後期ソナタという“ハレの日”を想定し、心の準備をする。
そして、仕事の予定を調整し、時間とお金をかけ上野まで足を運ぶ。
心を落ちつけ、最初の一音を待つ。
最後、あー、良かったと満足して大きな拍手を送る。

と余韻に浸っているところに、

「なーーーーんちゃって!!!!!!!」

すべてが台無し、興ざめの一夜となってしまいました。

2011年12月 6日 (火)

ダヴィッド・フレイ ピアノリサイタル@さいたま芸術劇場

2011年11月26日(土)

さいたま芸術劇場の名企画、ピアノ・エトワールシリーズのVol.16は、1981年フランス生まれのピアニスト、ダヴィッド・フレイの日本初ツァーでした。

【前半】
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番 ニ長調 KV 311
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調 作品28 「田園」

【後半】
モーツァルト:幻想曲 ハ短調 KV 475
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 作品53「ヴァルトシュタイン」

【アンコール】
シューマン:《子供の情景》より〈眠っている子供〉、〈詩人のお話〉
バッハ:《パルティータ第6番》より〈アルマンド〉
シューマン:《子供の情景》より〈見知らぬ国〉

フレイは、背もたれつきの椅子が好きのようで、最初は背もたれにもたれかかりやや後傾の姿勢で弾き始め、曲が進むにつれ、徐々に身体を起こしていきます。
演奏姿勢が少しグールドを彷彿とさせるところがあるものの、表現はまったく違います。グールドの再来というのはちょっと当たらないと思います。

グールドとの比較で言えば、グールドは古典派の曲は非常に明晰にさっぱり明るく活発に弾きますが、フレイは全く逆。暗いわけではないものの、テンポは落とし、一音一音確かめるように、内に籠もった弾き方をします。
あまり聴衆を意識しないような、作曲家と孤独に対話をしているようです。

音質は非常に繊細で美しい。

本来ギャラントなモーツアルトの311のソナタが、渋く内省的な曲として表現され、それは続くベートーヴェンの田園ソナタでも同様でした。
どちらも地味目のソナタであるのが、フレイの個性にぴったりはまっていた気がします。
変わっていましたが、とても良かったです。

後半のメジャーな曲になると、フレイもだいぶヴィルトゥオジティを意識した弾き方となり、時としてピアノが揺れるような大爆発もありました。

でも、どうも私はフレイは無理をしているような気がしてなりませんでした。
特にワルトシュタインのような華々しい曲が、果たして彼に合っているのかどうか疑問です。
ベートーヴェンだったら、きっと後期のソナタはとても上手なのではないかな、と感じたものでした。

アンコールは非常に感銘を受けました。
美しく、切なく、心にしみる。
シューマン、バッハとも、フレイの真骨頂はここにある、と得心しました。
特にバッハは、ペダルを多用し響きを重視した現代的な表現ですが、天にも昇るような心地よさでした。

またまた若くて才能のあるピアニストをひとり知ることになりました。
次もぜひ聴きたいリストに追加です。

2011年11月15日 (火)

ピアニストは内田光子やブーニンだけではない、アンドレイ・ピサレフ@大阪

芸術の秋真っ盛り、著名な海外ピアニストが続々と来日し、政治や経済状況がまったく冴えない日本の状況の中、クラシック・ピアノファンは至福の時を過ごせています。

先日の内田光子さんはじめ、昨年のショパンコンクール優勝者のユリアンナ・アブデーエワも来ましたし、おなじみのスタニスラフ・ブーニン、久々のマレイ・ペライアもありました。
アシュケナージは息子さんとデュオをしました。
今週には昨年のジュネーブ優勝の萩原麻未さんが登場しますし、奇才ヴァレリー・アファナシエフの、おどろおどろプログラムもあります。
韓国の若手、チョ・ソンジン君もあれば、フランスのベテラン、ミシェル・ベロフもある。

オケでは、先月エッシェンバッハウィーン・フィルが来て、ラン・ランと共演しましたし、今月は、サイモン・ラトルベルリン・フィル。ここのところは、サンクトペテルブルク・フィルが演奏していましたっけ。

チェロのヨーヨーマも来ていることを知りました。

さて、上に書いたアーティストたちは、そこそこメジャー路線の方たちばかりです。
しかし、しかし、世の中には、ひっそり目立たないけれど、実はたいへんな実力の持ち主で、聴く者のハートを捕らえて離さない演奏ができる、素晴らしいピアニストがたくさんいるのです。

イリーナ・メジューエワしかり、クシシュトフ・ヤブゥオンスキ(

あのブレハッチの兄弟子です)しかり。

そして、12月に大阪でリサイタルを行う、アンドレイ・ピサレフ

Photo_3

類い希な技術の確かさ、七色の音色を使い分ける魔術師。
モスクワ音楽院の名教授セルゲイ・ドレンスキーの愛弟子で、現在音楽院教授です。

まさにそういった隠れた逸材です。

まだまだチケットに余裕があるそうなので、関西圏近辺の方に、ぜひお薦めしたいリサイタルです。
プログラムもすばらしいです。
しかも、3,500円と、たいへんリーズナブル。

===============================
日時:2011年12月18日(日) 14:00開演(13:30開場)
会場:ザ・フェニックスホール (大阪市)

【プログラム】

ショパン:軍隊ポロネーズ
     24の前奏曲 op.28

リスト :巡礼の年 第2年イタリアより「婚礼」
     巡礼の年 第3年より「エステ荘の噴水」
     詩的で宗教的な調べより「孤独の中の神の祝福」
     メフィストワルツ第1番

===============================
【料金 (税込、全席指定)】
S席:¥3,500
Y席(学生席、小学生?大学生) :¥1,500
 (当日座席指定、クラス・ムージカのみ取り扱い)
===============================

【お問い合わせ】
株式会社クラス・ムージカ (tel : 03-5318-9066)
http://www.classmuzica.co.jp/andreypisarev201112.html

【プレイガイド】
ザ・フェニックスホールチケットセンター(06-6363-7999 9/20より発売開始) イープラス(eplus.jp/)
カンフェティチケットセンター(0120-240-540, http://confetti-web.com/)
チケットオンライン(カンフェティへの登録が必要です。)

より以前の記事一覧

twitter

2016年5月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ