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2011年10月 8日 (土)

ハオチェン・チャン ピアノリサイタル@東京文化会館 小ホール その1

2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで、辻井伸行君と金賞を分かち合った、中国の21歳の青年。
辻井君フィーバーで日本では蔭に隠れてしまっていた感がありました。
私はコンクールの映像を少し見たとき、やたら元気の良いファイナリストたちの中、辻井君とともに、チャンは清新な演奏をしていた記憶が少し残っている程度でした。

昨年もリサイタルがあり行こうか迷ったのですが、彼見た目線が細いし、音楽もそうなのかなあ、と漠然とした予断があったのと、若いからいつでも聴けるということもあって、結局聴きませんでした。

大きな間違いでした。

やはり聴かなければわからない。

今日聴いてみて、チャンは人の魂を動かすことのできるすばらしいアーティストであることを確信しました。

【前半】

スカルラッティ:
ソナタ ホ長調 K.380 L.23
ソナタ ハ短調 K.159 L.104

ショパン:
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調『熱情』Op.57

【後半】
ラヴェル:夜のガスパール

リスト:スペイン狂詩曲 S.254

【アンコール】
シューマン:トロイメライ
プロコフィエフ:
ピアノ・ソナタ 第7番『戦争ソナタ』終楽章
瀏陽河(中国湖南省民謡)

まずは、指ならしのスカルラッティ。
音が優しい。
指とか細そうなので、さぞや鋭角的な音かと思いきやさにあらず。
雲に浮かぶような軽いタッチ。
軽すぎて、時々音が抜けてしまったのはご愛敬。
そう、同じ文化会館で聴いた、パーヴェル・ネルセシアンを彷彿とさせます。
軽すぎて、時々音が抜けてしまったのはご愛敬。

ソフトペダルは多用して、ダンパーペダルは抑え気味、ロマン派のような曲にせず、あくまで控えめでクラシカルな表現。
地味なスタートだったので、まだ真価がわかりません。

続くショパン舟歌
これまた軽く、優しいアプローチ。
癒されます。
かといって、表面をなぞっているような音楽ではなく、深い確信と集中を感じます。
今週、ケマル・ゲキチの毒気にあてられたので、余計、ほっとする感じです。
普通なら激する部分になっても、適度に感情をコントロールして、あくまで上品です。終止部の下降スケール、デリケートなピアニシモ、軽やかで美しく、あー気持ち良い。

この軽い感じで、果たして『熱情ソナタ』が力強く弾けるのか、やや心配してしましました。ワルトシュタインの方が良かったんじゃないかしらん?

やや早めのテンポ設定。
第1楽章、主題の動機は軽めです。やはり彼の体格、力では、ブルーノ・レオナルド・ゲルバーのような、太い音は出ません。
でも、チャンは、その分、ディナーミクの対比を非常に明確に行い、特にスフォルツァンドの出し方がとても上手。そして、切迫感のあるフレーズを、ややテンポアップして前のめり気味に弾くことで、音楽に迫力感を与えていました。見事としかいいようがありません。
リズム感が見事で、私も含め、聴衆全体がグイグイ彼の音楽に引っ張られていくのを感じないわけにはいきませんでした。

第1楽章が終わったところで、これは拍手が出てしまうのではないかと思ったくらいでしたが、逆に、聴衆はシンと静まりかえり、第2楽章が始まるまでのそう短くはないインターバル~チャンはハンカチで一生懸命鍵盤を拭いていました~の間、ほとんど物音がせず、息を殺しているという状況でした。

こういうことは、そう滅多にあることではありません。

第2楽章は、最初のスカルラッティのような軽く力の抜けたタッチ。よどみのないテンポ。最初から最後まで音量を抑え、非常に内省的な音楽を表出しました。集中がすばらしく、控えめな表現なのに、なぜか引き込まれる力を持っています。

アタッカに近いインターバルで始まった第3楽章、猛烈なスピードです。
果たして、これでコーダが弾ききれるのだろうか、と心配したくらい。
チャンはただ流麗であるのではなく、軽やかさと激情を見事に弾き分けます。
激する部分では、うなり声まであげますので、相当な入れ込みよう。
しかし、決して感情に流されているようには聞こえず、どんなフォルテ、どんなスピードであっても、明晰に音楽を奏でます。
心配したコーダは、いよいよ心配になる猛烈スピード。こんなに早いのは、アンドレイ・コロベイニコフ以来かもしれません。
しかし、チャンが凄いのは、これだけ早くてもいささかもラフな感じ、曖昧な感じがせず、ペダルでぼかすこともなく、音の粒建ちがきちんとわかることです。自分のコントロール化にきっちり置いている、というところです。

技術的にも終始安定しており、実に素晴らしい演奏でした。
ブラボー。

【その2へ続く】

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コメント

こっこさま:

毒気にあてられたり、幸福になったり、ぶちのめされたり、とろとろになったり、コンサートはいろいろなので楽しいです。

萩さま:

もう1回聴いてもよいくらい、素晴らしかったです。
その2、なかなか書けなくてすみません。
いろいろなことがありすぎるものですから。

同じブログラムで、お隣の富山県高岡市での
明日のリサイタルに行けることになりました(歓喜)♪
一年前の感動を再び味わえるということで
明日が待ち遠しくて仕事もてに付かず、休憩時間に
まいくまさんのレビューを読みにきました。
ところで、その2はまだですか?

ハオさんのおかげで、「身体好」になったこっこです(笑)やっぱり音楽の影響力はすごいですね。
昨日の演奏は前よりで聴くことで、より感動が増したかもしれません。上野の小ホールは比較的どこからでも聴きやすいのですが、前よりは一体感がより強まりますね!
まいくまさんの解説を拝読し、ベートーヴェンも少しわかった気が…。ワルトシュタインは音に似合いそうですね!

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