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2011年6月の19件の記事

2011年6月30日 (木)

チャイコフスキーコンクール、演奏終了~優勝の行方は

トリフォノフのショパンのピアノ協奏曲第1番は大成功のうちに終了。
ややスローででたオーケストラを引っ張るように、自分のリズムにうまく持ち込みました。
音は彼独特の美音を維持。
指揮、オーケストラもリハーサルの時の不出来が嘘のように蘇っていました。
スローテンポの第2楽章は、ピアノとオーケストラがぴったりと寄り添い、極上の美の世界を堪能することができました。
第3楽章のラスト、ショパンコンクールでは激走していたところ、落ち着いて、しかし十分盛り上がって、メカニックもほぼ完璧に弾ききりました。
素晴らしかった!

ソン・ヨルムは、相変わらずの冷徹なタッチと、激しい情感をこめた渾身の演奏。
ただ、意気込みが猛烈すぎて、力が入りまくり、珍しくミスも多かったし、暑さもあったのか、だんだんバテてきていたような気がします。
ピアノをヤマハに変えてきましたが、強音が激しすぎて、美しさを完全には引き出せていませんでした。

チェルノフは、前に弾いたヨルムと対照的なふくよかな音と音楽を聴かせてくれました。ブラームスの雰囲気に実にマッチしている。
いかんせん、やはり完成度が今ひとつだったのと、指揮&オケがどうもバラバラと崩壊気味で、ピアノとの掛け合いもうまくいかなくことが多く、やや悔いの残る演奏に終わってしまいました。
部分的には大変心を打つところもあるのに残念です。完成形を聴いてみたかったです。

というわけで、私の中ではトリフォノフが大きく優勝に近づいたのではなかろうかと思えています。
採点方法はわかりませんが、1次からファイナルまですべてハイレベルであったし、特にファイナルを2曲とも最高にまとめられたのはトリフォノフだけだったと思います。

2位以下は全く予想がつきません。

ソン・ヨルムはホールで聴くと相当インパクトがある演奏なのかもしれません。

チョ・ソンジンは、2曲揃える、というところでは上位に入ってもおかしくない。

ロマノフスキーは、チャイコフスキーが荒っぽくなってしまったけれど、ラフマニノフはかなり良かったです。

チェルノフは、音質と音楽には大変魅力のある個性を感じましたが、完成度が低かったのがどう響くか。

あと数時間で結果は判明することでしょう。

チャイコフスキーコンクール、いよいよ最終日~順位の行方は

ファイナル5人のうちロマノフスキーとチョ・ソンジンまでが終わりました。
今日(30日)の日本時間18時から、残りのトリフォノフ、ソン・ヨルム、チェルノフが弾いて、数時間後に優勝者が決まります。

優勝の行方は、ほとんど混沌としていると言わざるを得ません。

2次予選からの印象を3段階くらいでまとめてみました。

                    2次-1  2次-2 ファイナル1  ファイナル2
                    リサイタル  モツコン
ロマノフスキー    ◎   ○  チャイコ1△  ラフマ3◎
チョ・ソンジン    ○   ○  ラフマ3○   チャイコ1○
トリフォノフ     ◎   ◎  チャイコ1◎  ショパン1 ?
ソン・ヨルム     ◎   ◎  ラフマ3◎   チャイコ1 ?
チェルノフ      ?   ?  チャイコ1△  ブラ1 ?

チェルノフは時間的に聴けないことが多かったです。

ロマノフスキーは、出来不出来に波がありました。
ただ、良い時の演奏は、ロマンティックで音楽にあふれ、大きく、大人の表現で、まことにすばらしく、優勝以外ないだろうと、思えてしまうようです。
ファイナルのチャイコフスキーがオケと呼吸が合わず、相当苦しそうだったのが残念です。ラフマニノフが素晴らしかっただけに、総合でどうなることでしょうか。
最後のラフマニノフ3番だけでも優勝に値するともいえるし、全体のバランスとかメカニックの正確性を重視されてしまあうと、3位~4位ということもあるかもしれません。

チョ・ソンジンは、すべてにおいて完成度の高い演奏を披露し、メカニックの安定度についてはピカ一でした。
オケとも堂々とわたりあい、恐るべき17歳です。
ディテールの表現がやや作為的なところが出てしまうのが、まだ若いところかもしれません。
優勝する圧倒的なものは感じませんが、2位~3位というのはあり得そうです。

トリフォノフは今回絶好調といえるのではないでしょうか。
オーケストラとのアンサンブルが不安だったり、走り癖があったりと、事前には随分心配しましたが、課題はほぼクリア。短期間の間に随分成長したと思います。
特にファイナルのチャイコフスキーは良い意味で裏切られた素晴らしい演奏でした。チャイコフスーのコンチェルトはトリフォノフには合わないと思い込んでいたのですが、そんなことはありませんでした。見事でした。
残りのショパンが、果たしでうまくいくかにすべてがかかっていることでしょう。
リハーサル初回は指揮とオケがボロボロ、2回目は多少トリフォノフの意図が伝わったようですが、完成度はかなりまだ低かったです。
本番で起死回生となるかどうか。
優勝か、悪くても2位はあるのではないでしょうか。

ソン・ヨルムは圧倒的なパワーとメカニックで勝ち進んできました。
ファイナルのラフマニノフではちょっと音が乾いて聞こえていたのが気になりました。マイクのせいなのかもしれませんが。
チャイコフスキーの出来次第では、優勝もあり。少なくとも上位には食い込みそうな勢いだと思います。

チェルノフは、時間帯のせいであまり聴けていません。
ファイナルのリハーサルとチャイコフスキーのコンチェルト本番を聴けました。彼はここまで残ると思っていなかったのか、リハーサルではまったく弾けておらず、暗譜で弾けるのかどうかも怪しまれたところでしたが、本番では何とか立て直してきました。
体格が大きく、太くて厚い音を出すことができ、5人の中では、一番ロシア的と言えるかもしれません。
ただ、やはり完成度の点でまだまだ不十分で、メカもところどころ破綻していました。
リサイタルを聴いていないので、ファイナル1曲だけからの印象になってしまいますが、上位はちょっと辛いところでしょうか。

以上をまとめると、現時点で考えられるシナリオ。

トリフォノフは、オケとの関係上、失敗の可能性もある。
ソン・ヨルムは安定していて、大失敗は考えられない。
チェルノフの1発逆転もあまり想像できない。ブラームス1番で地味だし。

ということで、次の2パターンくらいに絞られるのではないでしょうか。

A.トリフォノフのショパンが成功、ソン・ヨルムのチャイコも成功
 優勝:トリフォノフ
 2位:ソン・ヨルム
 3位:ロマノフスキーorチョ・ソンジン

B.トリフォノフのショパンが失敗、ソン・ヨルムのチャイコが成功
 優勝:ソン・ヨルム
 2位:トリフォノフ
 3位:ロマノフスキーorチョ・ソンジン

2011年6月23日 (木)

【ヌーブルジェ動画】語るヌーブルジェ教授

演奏はまったくなし。

一生懸命音楽について語っています。

2011年6月21日 (火)

チャイコフスキーコンクール2次予選の行方は?

1次予選の29人から12人に絞られたチャイコフスキーコンクール。
現在2次予選第1フェーズのリサイタル。
現時点でまだ3人の演奏が残っていますが、有力どころはほぼ出そろった感があります。

何といっても、昨日のアレクサンダー・ロマノフスキーの演奏は圧巻でした。
これぞ正統派というべき堂々とした演奏。
(系統的にはもしかして新興派に属するのかも?)
シューマンの交響的練習曲の大きさと深さ、ラフマニノフ第2ソナタのロシアの叙情。
スケールが大きくチャイコフスキーコンクールにふさわしい演奏だったと思います。
メカニックもほぼ安定していました。

同じく昨日のフィリップ・コパチェフスキも、1次予選に続いて大変ユニークな個性を発揮してくれました。
シューマンクライスレリアーナは予想どおりの遊び心満載。
終曲は、あえて崩れ墜ちていくような印象的な結末。
ラフマニノフはとてもモダンで、宇宙で聴いているような響き。
彼は曲を相当いじっていますが、非常に知性的でクール。演奏を感情にゆだねるような部分が少ないです。
このいじっている部分の評価が気になります。

今日、さきほど登場したおなじみのダニイル・トリフォノフは、またまた最高の音楽性と美意識を発揮してくれました。
ショパンのOp.25のエチュードを、あれほど音楽的に弾けるピアニストはそうそういないことでしょう。
惜しむらくは、メカニックがやや不安定で、結構はずしやごまかしが多かったこと。これがリサイタルであれば、圧倒的な音楽の前には少々のキズなどほとんど問題ないのでしょうが、何せコンクールですので、メカニックが弱い部分をどう評価されるのか、心配です。

いずれにしても、この3人の中から優勝者が出る確率が相当高いような気がしてきています。
メカニックと音楽性との総合力という点では、ロマノフスキーが半歩リードした感はあります。

なお、その他のコンテスタントも非常にハイレベルの演奏を繰り広げています。

アレクサンダー・シンチュクはキレの良いテクニックを披露。
エドワード・クンツは内省的で深みのある大人の音楽。ただ少し疲れが出てしまった。
サラは少しタッチが弱いのですが、そこを生かした優しい音楽となっている。
チョ・ソンジンは若いだけに素直な音楽と、透明な音。そして安定感のあるメカ。
ソン・ヨルムは超絶技巧。都会的なモダンさも持ち合わせている。

残念ながらアレクサンダー・ルビャンツェフだけ聞き漏らしています。

このあたりになると、誰が次に進んでもおかしくありません。
また、誰が進むかで、審査員の評価基準が少しわかってくることでしょう。

2011年6月20日 (月)

パシフィカ・カルテット@サルビアホール

猛烈、疾風怒濤のカルテット。
息もつかせぬ大熱演。
死人も蘇る演奏とはまさにこのことでしょう。
ピアノバカが室内楽に目覚めてしまいそうです。

【プログラム】
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第1番 変ホ長調 Op.12
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 Op.110
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 Op.59-1
                「ラズモフスキー第1」

【アンコール】

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 Op.130
          第5楽章 カヴァティーナ

               
               

基本、ほとんどピアノばかり聴いているので、論評めいたことは言えるものではありませんが、感じたままを書き留めます。

・とにかく驚異的な集中力と迫力と切れ味。ダイナミックレンジが広い。まばたく暇さえ与えない、という感じでした。

・感情の発露がもの凄い。特に第1ヴァイオリンのガトーナラとチェロのヴェイモス。全身をつかって叙情を表現。かといって、ネチネチしているのではなく、極めてモダンでスッキリしており、格好良い。

・当たり前ですが、完璧で一糸乱れぬアンサンブル。アイコンタクトを頻繁に取り合っていたのが印象的。

・ショスタコーヴィチは一番衝撃を受けました。
ラルゴは深淵で、アレグロモルトは猛烈でグルーブ感あふれる。
自然と身体が前のめりになり、引きずり込まれていく。
かなりの人が身体や頭、揺らしていました。
チェロとビオラのピアノのモノトーンの上に、ヴァイオリンのメロディが乗ってくるところはゾクゾクしてしまいました。

・ショスタコーヴィチは、自作などいろいろな曲からの本歌取りがあるそうですが、私にはよくわからず。唯一、ピアノトリオの有名な旋律がアレグロモルトに出てくるところはわかりました。
迫力満点。感動。

・ベートーヴェンはシンフォニックで、まるでオーケストラを聴いているようでした。

・もちろん、クラシック音楽の枠で演奏していますが、受ける印象はもはやモダンな音楽。現代人の感覚。今そこで生まれたような音楽に思えました。

※メンデルスゾーンの後にコール2回。ショスタコーヴィチの後にコール3回。
最後も拍手鳴り止まず。スタンディングオベーションも7~8人。
聴衆の集中もほぼ抜群で、とても一体感がありました。

※横浜鶴見駅前2分のサルビアホールは初めてでした。
たった100席の親密な空間。
ウッディーな作りで、室内楽には最適。
音響効果抜群で、音に酔いしれてしまいました。

※ピアニストを追っかけているだけで破綻しそうなのに、この上好きなものが増えたらどうしましょう。
といいながら、すでに、この後のサルビアホールでのカルテット3連発をどうしようかと考えている。

2011年6月19日 (日)

トリフォノフ、ソン・ヨルム、シンチュク、ドゥボフ@チャイコフキーコンクール

本日の未明にダニイル・トリフォノフがチャイコフスキーコンクールに登場。
相変わらず素晴らしいトリフォノフの世界を聴かせてもらいました。

音に対する美意識は本当に抜きんでています。
ショパン舟歌などはますます上手になってきている。
もうリサイタルを聴いているようです。

激しい部分になると、感情がのりすぎて、メカニックが少々不安定になる感があるところが、コンクールとしてはやや不安ではあります。

でもコンチェルトに余程の事故がないかぎり、優勝に絡んでくることでしょう。

審査員のバリー・ダグラスとネルソン・フレイレが聴衆と同じように最後まで拍手しているのが印象的でした。

トリフォノフの演奏の興奮冷めやらぬ中登場したのは韓国のソン・ヨルム
音楽的にはトリフォノフの後だけに、やや物足りないところはあったのと、ベートーヴェンでは慎重すぎたのか、ややリズムがもっさりした感じに聞こえました。
しかし、メカニカルな曲では非常に高度な超絶技巧を発揮しました。
チャイコフスキーの悲愴交響曲の第3楽章のピアノ編曲版は、猛烈なスピードで技巧の嵐。

メカニックでアピールしましたが、果たして審査員がどう受け取るのか。

演奏後、ダクラスはあまり気のない拍手。フレイレは無表情で拍手していませんでした。

その他、You Tubeにさっそくいくつか動画がアップされはじめ、何人かもう一度聴きなおしてみました。

アレクサンダー・シンチュクや、アンドレイ・ドゥボフも、なかなか立派な演奏だと思います。

本日が一次予選最終日。
明日の朝には二次予選の進出者が決まっています。

2011年6月18日 (土)

堪能、チャイコフスキーコンクール

昨年のショパンコンクール以来、コンクールの面白さにはまってしまいました。特に百花繚乱ともいうべき一次予選がとても楽しい。

ただ、どうも海外の動画配信は調子が悪いことが多く、満足に観られたことが少ないです。
それと、ヨーロッパだと時間的に深夜であることが多い。

チャイコフスキーコンクールは何とか動画配信も観られ、時間的にも半分くらいは試聴可能なので嬉しいです。

そして、もっと嬉しいのが、コンテスタントのレベルが非常に高いこと。
一次予選出場者29人中、ロシア人が15人もおり、そのレベルがまた異様に高い。

ショパンコンクールの一次予選のように、メカニックがボロボロというケースは、観られた範囲ではまったくありません。

観た中で、これまで特に印象に残ったのが、

エドワード・クンツ(ロシア、30歳)
アレクサンダー・ロマノフスキー(ウクライナ、26歳)
フィリップ・コパチェフスキ(ロシア、21歳)
ゲオルグ・グロモフ(ロシア、30歳)

このうち、クンツ、ロマノフスキー、グロモフは、年齢にふさわしい、完成された音楽を聴かせてくれました。
ロマノフスキーとグロモフは、これぞ正統派、というべき演奏。
グロモフの余裕のある戦争ソナタは凄かった。
クンツは独特の内省的な世界観を持っています。

仰天したのがコパチェフスキ
非常に個性的で、変わったタッチやリズムで変幻自在の音楽を展開しますが、かといってクラシックの枠をはみ出す破天荒ではなく、説得力があります。
自分の世界にグイグイ聴く者を引き寄せてしまう、オーラがありました。

4人に共通するのが、チャイコフスキーがとても上手なこと。
どれを聴いても、みな、うっとりしてしまいます。
さすが、自国の音楽。

ベテラン3人は、上手くて当然なのかもしれません。

コンクール的にはコパチェフスキが若く、意欲的で、面白いかもしれません。

今夜はこの後、ショパンコンクール3位、そして、先日のルービンシュタインコンクール優勝のダニイル・トリフォノフ(ロシア)が登場します。
トリフォノフは当然優勝候補だと思いますが、コンチェルトが3曲もあり、チャイコフスキー1番のようにスケールの大きな曲が彼に果たして合うかどうか、心配な点もあります。
他のコンテスタントのレベルも高いので、決して安泰ではないことでしょう。

さらに、2年前のヴァン・クライバーンコンクールで2位だったソン・ヨルム(韓国)も登場します。
最終日には、ルビンシュタインコンクールでトリフォノフを脅かしたギルトブルクがいます。

しばらく目が(耳が)離せない日々が、また続くことでしょう。

※先ほど、前回の浜松コンクールで優勝したチョ・ソンジン(韓国)が登場しました。
技術はたいしたものながら、百戦錬磨のロシア人の猛者たちと比べると、どうも旗色が悪いような感じを持ちました。

※女性コンテスタントたちをまだじっくり聴けていないので、早くアーカイヴがアップされるのを待ちたいです。

※クンツやグロモフは、本来、もう2世代前の人たちですよねえ。上原彩子さんが優勝したのが2002年。ルール上はもちろん出場できるとはいえ、反則だなあ。
17歳のチョ・ソンジンとの年齢差は13歳。
この間の人生経験値の差は大きいと思います。

2011年6月14日 (火)

ユジャ・ワンHD動画~プロコフィエフ・ピアノ協奏曲第3番

ヌーブルジェの動画はなかなか増えません。彼、どうも商業ベースには乗らないクチのようですねえ。

対照的にどんどん露出してくるのがユジャ・ワン。

2010年の10月ころにはもうアップされていましたが、プロコフィエフづいたところでじっくり鑑賞してみました。HDのすばらしい動画。

演奏も強烈かつ爽快。

コンセルトヘボウに来る聴衆も思わず第1楽章で拍手してしまうという。

たまにオケと合っていないのはご愛敬。

2011年6月13日 (月)

お遊び~プロコフィエフ ソナタ 第7番 第3楽章スピードくらべ

アレクサンダー・ガブリリュクのプロコフィエフの第7番ソナタの猛烈な迫力とスピードがまだ耳に残っています。

あまり趣味はよろしくないですが、簡単に調べられるところで、第3楽章の聴き比べをして、速さを記録してみました。

ミハイル・プレトニョフ      3:05 重量級
マルタ・アルゲリッチ       3:09  全部猛烈
マウリツィオ・ポリーニ      3:14  キレキレ
ウラディーミル・ホロヴィッツ   3:15  ラスト猛爆
アレクセイ・スルタノフ      3:15 ラスト爆裂
イム・ドンヒョク           3:15 軽め
ラン・ラン              3:26 モダン
グレゴリー・ソコロフ        3:30 跳躍
ボリス・ベレゾフスキー      3:35 メガトン
グレン・グールド          3:42 丁寧
スヴィアトスラフ・リヒテル    3:43 安定

たぶん、ガブリリュクはスピードはアルゲリッチ、プレトニョフ級です。

ラストの爆発ぶりは、ホロヴィッツ、スルタノフ級でした。

ラン・ランなどは意外でした。

この曲を初演したリヒテルは、若い人たちがこんなに速く弾くとは思いもしなかったかもしれません。

ヌーブルジェは弾くのでしょうか?
協奏曲の2番弾いてますから、レパートリーではあることでしょう。
想像するだけで卒倒しそう。

ユジャ・ワンは6番弾いてますが、7番はまだみたいです。
こちらも、頭振り乱す姿が見えるようです。

2011年6月12日 (日)

アレクサンダー・ガヴリリュク ピアノ・リサイタル@オペラシティコンサートホール

2011年6月11日(土)19時~

昼間聴いたイリーナ・メジューエワとは対照的なヴィルトゥオジティにあふれた演奏。
メカニックに関しては間違いなく世界最高峰。
そして、メカだけではすまさない緻密な繊細さも持ち合わせています。

【前半】
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第14番「月光」 Op.27-2
ショパン:幻想即興曲Op.66
                2つのノクターンOp.48
                   スケルツォ第1番Op.20
【後半】
ラフマニノフ:楽興の時Op.16
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番「戦争ソナタ」Op.83

【アンコール】

スクリャービン:エチュード嬰ハ短調 Op.2-1
フィリペンコ:トッカータ
ショパン:エチュード 変ホ短調 Op.10-6
リスト/ホロヴィッツ ラコッツィー行進曲
ラフマニノフ/コチシュ:ヴォカリーズ

月光ソナタの第1楽章。テンポをぐっと落として、神経が張り詰めるような、極めて内省的な表現。音は尖っておらず、優しいふくよかさがある。
第2楽章はやや早めで、しかし、相変わらず精細さを保ち、第3楽章は、史上最高とも思えるスピード。
あれだけのスピードで弾きながらも、粒立ちははっきりし、フォルテシモになっても音が濁ったり割れたりしない。そして、ピアノの部分の繊細さも手抜きがない。
コーダはかなりアッチェランド気味で、やや知性のたがをはずして、感興にまかせる。
でも、ぎりぎり下品には陥っていない。

のっけから、もの凄い月光を聴いてしまいました。
第1楽章と第3楽章のスピードの差がこれだけある演奏は他にないのではないでしょうか。調べてみたいものです。

ショパンの幻想即興曲は、このくらいの人になると、目をつぶっても弾けるような曲なのでしょうね。最高音を強調しないでうねるようにレガートで入ってくる感じが上手でした。

ノクターン48-1、インテンポなのだけれど、装飾などで少しアレンジをいれていました。主題が変奏で戻ってきたところからラストにかけては、テンポアップして少々猛爆気味で、ショパンとしてはちょっとやり過ぎの感はあったかもしれません。

48-2のようなしっとりした曲は、抑制を効かせてとても美しいです。

後半のラフマニノフ
ラフマニノフ本人の演奏は、ヴィルトゥオジティをもって弾くところと、旋律を歌い上げるところの対比をかなりつけていたといいます。今残っている録音などを聴いても、その感じはわかります。
ガブリリュクも、ラフマニノフが乗り移ったごとく、猛烈なメカニックを駆使するとともに、叙情的な部分は繊細な美音で歌い上げます。
大きな分厚い和音の響きが印象的でした。

プロコフィエフも猛烈でした。
機関銃のような打音。太い音。スピード。
やはりスピード競争やったら1,2を争いそうです。
アルゲリッチか、ポリーニか。
第3楽章のラストがまた猛烈なアッチェランドで、スピード違反で捕まってしまいそうな勢いでした。

アンコールは大サービスで5曲。

フィリペンコのトッカータとリスト/ホロヴィッツのラコッツィー行進曲は、メカニックの限界というべき演奏でした。
ピアノが壊れてしまいそう。

フィリペンコの後弾かれたショパンのエチュードが、やや音が濁って聞こえてしまっていたので、もしかして、あそこで調律が狂ってしまったのかもしれません。

最後まで集中をきらさず、ヴォカリーズでうっとり締めくくってくれました。

メカニックの切れ味は、ユジャ・ワンやヌーブルジェのようなキラキラ、キレキレというのとちょっと違い、ナタでバッサリというタイプです。
重量感がある。
弱音は透明感というより、少し色のある、優しい感じの美しさで素晴らしい。

彼はきっとサービス精神もあるのでしょう、120%の燃え上がり、限界ぎりぎりのパーフォーマンスをめざしているようです。

私は、少々歳も取りましたから、彼くらい上手であれば、90%くらいの力で弾いてもらっても十分楽しめそうな気はします。

イリーナ・メジューエワ レクチャーコンサート@新宿住友ビル

6月11日(土)13:00~

恒例のピアニストのイリーナ・メジューエワさんと、音楽評論家の真嶋雄大氏とによる、朝日カルチャーセンター(新宿)でのレクチャーコンサート。
今シーズンはリストイヤーにちなんで、リストのピアノ曲のレクチャーコンサートが2回行われます。

【リスト名曲集~生誕200年に寄せて】

「愛の夢」 第3番
メフィストワルツ 第1番
コンソレーション 第1番~第3番
ラ・カンパネラ
ベーートーヴェン/リスト 交響曲第6番「田園」最初のみ
シューベルト/リスト 水車小屋の男と小川
巡礼の年報第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」より「カンツォーネ」と「タランテッラ」

メジューエワさん話によると、リストはもちろん天才ではあったのだけれど、同時にものすごい努力家で、メカニックのトレーニングにはそれは時間を費やしていたらしいことが、関係者の話などからわかるそうです。

弟子に対して要求した練習のひとつに、手を鍵盤の上に置いたら、一本の指だけで打鍵をする。それを一本あたり2時間づつ行うことを要求したとのことです。

それから、メカニックの練習を次のように4段階に分ける。
 1.スケール&アルペジオ
 2.トリル
 3.オクターブ
 4.3度、6度

とここまではわかるとして、これを4→1というように、困難な方から練習させたそうです。

天才は努力することに関しても抜きんでているものです。
これは他の天才にも共通することでしょう。

リストの技巧的な曲であっても、その音楽には精神的深みがあるとメジューエワさんは言います。

彼女の演奏を聴いていると、そのことがよくわかります。

「愛の夢」はことさらメランコリックでないのに、心のひだに絡まってくるような、しんみりとした叙情があります。

落ち着いたメフィストワルツは、いわゆるヴィルトゥオーソがガンガン弾く音楽とは一線を画し、彼女の言うリストの演劇性をきっちり表現。

コンソレーション、カンパネラ、水車小屋の男と小川は、はしもとホールで聴いたばかり。
さすがに音響は今回は場所が場所だけに劣るものの、音楽の基本は変わりません。
ヤマハの小さなピアノから、美しい音を、よくぞ引き出すものです。

リストのトランスクリプションの一例として、ベートーヴェンの田園シンフォニーのさわりが演奏されたのは楽しかったです。
とても良い雰囲気。

カンツォーネとタランテッラ、技巧的な曲でも、一つ一つの音を決してないがしろにしないで、すべての音符が見えるようです。
十分な迫力ながら、感情が乗りすぎて暴走するようなことはなく、最後まで知性によるコントロールの効いた、みごとな演奏でした。

演奏後、いつものようなはにかむ笑顔で、「リストのようにもっと練習しないと」と謙遜されていたのが微笑ましい。

いつも不思議に感じてしまうことがあります。
明るい会議室というおよそ雰囲気のないところで、聴衆はたった40~50人で、服装なども皆ラフ、という日常っぽい空間であるのに、なぜか目の前では一切手抜きなし、妥協なしの、超一流のピアノ演奏が奏でられている。

聴く方もがんばって集中しているつもりですが、せっかくのすばらしい演奏ですから、もう少し雰囲気の演出があっても良いのじゃないだろうか、と思ったりもします。
たった1時間半の講座のコマでは難しいとは思いつつも、よいアイデアはないものでしょうか。

※この日のヤマハのピアノはとてもよく調律ができていたように感じました。
メジューエワさんのテクニックによるところも大きいでしょうが、小さいピアノとしては最高レベルの音が聴けたと思います。

2011年6月 9日 (木)

天才少女!? 松田華音

土曜日の午後に聴くリストのタランテラの予習をしていたら、若い、というか、まだ子供というべき松田華音さんの動画を発見。

まだ14歳らしい。
ロシア在住。グネーシン音楽学校で勉強中。

なかなか堂々として場慣れしている感じです。

そしたら、土曜の夜に聴く楽興の時(ラフマニノフ)もありました。
動画の音が悪いので、実際、どんな音を出せる子なのかはまだわかりませんが、迫力は満点。

で、バッハを弾くとこうなります。
ちょっと震災後のトリフォノフの追悼演奏を彷彿とさせる感じのロマンティックバッハ。

年齢よりはぐっと大人っぽい表現ができるようです。
もうちょっと力が抜けるとさらに良い感じがしますが、動画ですからやはりこれだけでは何とも言えません。

それにしても小さなときから随分とたくさんの動画が露出しています。

2011年6月 8日 (水)

フランチェスコ・トリスターノ ピアノ・リサイタル@白寿ホール

2011年6月7日(火)

内部奏法は何度か聴いたことがありますが、こんなにまとめて聴いたのは初めて。音響的には素敵でびっくりしました。

クラシックのコンサート、というより、最初から最後まで”トリスターノのコンサート”でした。
奇才です。

【前半】
フランチェスコ・トリスターノ:
  "KYEOTP-intoroduction"~improvisation
J.S.バッハ:パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825
ジョン・ケージ:ある風景の中で

【後半】
オルランド・ギボンズ:5つの作品
J.S.バッハ:パルティータ 第6番 ホ短調 BWV830
フランチェスコ・トリスターノ:
 シャコンヌ~グラウンド・ベース(2004)

【アンコール】
フランチェスコ・トリスターノの自作曲(たぶん)

まずは自作の即興演奏。
執拗に、執拗に、繰り返される同音連打。
拍動といった感じの一定のリズム型もいつ終わるとなく続く。
立ち上がって弦を直接はじいているのか、押さえているのか。
いきなりびっくりさせます。
どんどんクレッシェンドし、最後は大音量。
余韻が残る中で、バッハへ。

タッチは軽やかになり、ペダルからは完全に足を離し、完全にクラシカルなスタイルに変身・・・・
と思わせておいて、実は、ここに早くもトリスターノの意図が明確に現れる。

【編集中】

2011年6月 6日 (月)

イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル@杜のホールはしもとホール2

【前の記事からの続き】
後半のリストは、まずシューベルト歌曲のトランスクリプション。
歌曲だけにメロディーラインがしっかりと強調されてわかりやすい。
リストらしい技巧のアピールはそこそこに、音楽を深く掘り下げていっている。
このあたりからメジューエワさんのいつものグッと音楽に深く没入していくような集中が高まってきたように感じます。

エステ荘の噴水。
これもいたずらに技巧を前面に出さずに、ゆったりとしたテンポで、全ての音を見せようかというようです。
響きと煌めきに温度があって、眩しい。
疎かにされる音がひとつもない。
一流のアーティストに共通する美に対する鋭い感覚を感じます。

続く小品からコンソレーションにかけては、音楽としては地味で内省的になり、しかし、ここでメジューエワさんは、完全にリストの音楽的世界に浸り始めたように感じました。
ノクターンや、コンソレーション3番の息を詰めるような美しさといったら、この世のものとは思えません。
昨日のデミジェンコに続いて、またまた苦手なリストに感動してしまいました。

ラストのラ・カンパネラ。
昨年も聴いていて、スローテンポに驚いたものです。
今回ももちろん同じアプローチで、ここまでの演奏と同様、表面的な技巧の華々しさを敢えて抑制し、一音一音がそこに書かれている意味を、それぞれに深くえぐりだしているようです。
音質はピュアで、音色は艶やか。そこに深い読譜と集中による凄みが加わり、驚異的な音楽が展開しました。
こんなに深いラ・カンパネラは初めてです。
昨日に続いてまた泣いてしまいました。

技巧的な曲の技巧を抑えて弾くというのは、もしかしたらすごく難しいことなのかもしれません。
でも技巧は本来音楽の下僕であることでしょう。

メジューエワさん、ベートーヴェンもショパンも素晴らしいですが、もしかして、リストがツボにはまるのではないかと、ふと感じました。
リストの暗い色調の曲を弾いてもらったらどうなるのだろうか、などと。

アンコールは前日に引き続いて、またまたショパンのノクターン嬰ハ短調遺作。
ラ・カンパネラでの集中がまだ続き、ぐっと音楽に引きずりこまれます。
幾分早めのテンポ、マズルカ部分はテンポ指定どおりにスロー。
モレンドはまさに死んでしまいそうな消え方。
ラストのスケールのデリカシーといったら心臓がドキドキしてしまいました。

またひとつ素晴らしいコンサート体験をすることができました。

2011年6月 5日 (日)

イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル@杜のホールはしもとホール

ベートーヴェン、ショパン、シューマンと聴いてきたメジューエワさん。
今日はリストが聴きどころ。
ピアノの初心者から、マニアまでを満足させようとする全く手抜きのないプログラムはさすが。
演奏は比較的たんたんと始まり、進むにつれ、徐々に集中が増してきました。
もしかして、リスト弾きだったのか、と思うような見事なパーフォーマンスでした。
※身近になりすぎて敬称略せません(^_^;)

【前半】
モーツァルト:ピアノ・ソナタ ト長調 KV283
ショパン:ノクター ン 変ホ長調 Op.9-2
ショパン:子犬のワルツ Op.64-1
ショパン:ワルツ 嬰ハ短調 Op.64-2
ショパン:雨だれのプレリュードOp.28-15
ショパン:舟歌 Op.60

【後半】
シューベルト/リスト
      水車小屋の男と小川
      さすらい人
       連祷
リスト:エステ荘の噴水
リスト:ピアノ小品 S192-2
リスト:ノクターン S207
リスト:コンソレーション 1〜3番
リスト:ラ・カンパネラ

【アンコール】
ショパン:ノクターン嬰ハ短調 遺作

黒のシックなドレスで登場のメジューエワさんは、いつものように楽譜を持って登場。
青い表紙だったので、ベーレンライター原典版でしょうか。
モーツァルトを彼女で聴くのはたぶん初めて。
モーツァルト初期の秀作。
楽しみでした。
ベートーヴェンのようにしっかりと深いタッチと、艶やかな音。
やはりなよなよしていない。
ペダルは比較的使い、フっとテンポを緩めてみたり、お得意のドッキリする休符をいれてみたり、ロマンな味付けのモーツァルト。でも構成感はがっちりしており、第3楽章などはインテンポで気持ち良い拍を刻む。
なかなかゴージャスなモーツアルトでした。

ショパンの有名曲シリーズは、幅広い聴衆向けのサービスの現れでしょう。いつものような極度にストイックで緊張を誘うスタイルよりは、少しくだけて緩めだったでしょうか。
それでも雨だれのプレリュードあたりになると
雨は蕭々 (しょうしょう)と降るというよりも、轟々と降っている。

前半の締めは、マニアも納得の舟歌。
安定感のある音楽の運び、大きな音楽。
素晴らしい。でもまだまだここまでは、いつもの息を呑んで居ずまいを正さなければばらないような、メジューエワさんらしさが、完全に出きっている感じでないように思えました。

【次の記事へ続く】

ニコライ・デミジェンコ ピアノ・リサイタル@すみだトリフォニーホール3

【前の記事からの続き】
アンコール1曲目は、昨年来、3回に1回は聴くのではと思うくらいの、ショパン、ノクターン嬰ハ短調遺作。
事前にサイトに動画が一部アップされていたので、予想通りでした。
ゆったりしたテンポ。優しいトリル。叙情たっぷりなのに、鼻につかない自然さ。マズルカの快活。終盤のスケールの身も震えるような絶妙な美しさ。圧巻。

2曲目は同じく嬰ハ短調のノクターンOp.27-1。
ほの暗い叙情をたんたんと歌う。中間部爆発を逆に抑制で抜ける。沈むようなフィナーレ。

3曲目はアンコールのアンコールといったノリのスカルラッティ。
ややリラックスモードで華麗に軽やか。

おそらくデミジェンコの音楽はずっと聴いていても飽きがこない。
耳が疲れることもないし、音楽が平板になることもない。
すばらしいアーティストでした。

※こんなにすばらしい演奏なのに、ホールがガラガラというのが、まことに残念です。商売とアートはまた別次元の話とはいえ、悲しいものがありました。

※嬰ハ短調遺作のノクターンはメカ的にはだいたい弾けるのですが、こういう演奏を聴いてしまうと弾くのが嫌になります。

ニコライ・デミジェンコ ピアノ・リサイタル@すみだトリフォニーホール2

デミジェンコのプログラムはインターバルをはさんで、後半はリスト。
私にとって鬼門のリスト。
今年はアニバーサリーなのでたくさん聴いてはいるものの、なかなか音楽が心の中まではいってこない。特にリストオリジナル曲がだめです。
トランスクリプションは、そこそこ楽しめるようになってきた気がします。

最初の曲は「伝説」の1番。「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」というやけに絵画的情景が浮かぶ標題の曲。
ヌーブルジェが最近演奏しているとあって、少しネットなどでチェックはしていましたが、真剣に聴くのは初めてです。

すると、舞台から、小鳥のさえずりが聞こえ出しました。
えっ、えっ、です。
これはピアノの音ではない。小鳥のさえずりそのものです。
なんという絶妙なタッチとセンス。
そして、説教のほうも、音楽にのり、語り口調が優しく慈愛に満ちている。
説教といっても、説いて教える宗教的な説教ですからね。
単なるメカニックを超えた音楽がきちんと曲を支配していました。
感動的。

ほとんど間髪をおかずに、ロ短調ソナタ。
威勢の良い演奏を何度が聴きました。
デミジェンコより、オクターブの連打を上手に弾く若手はいくらでもいることでしょう。
しかし、デミジェンコ以上に音楽的感動を表出できる演奏家は、そうそうおりますまい。

まず、出だしで圧倒されました。
地獄に落ちていくような、深い深いタッチ。
本当に消え落ちてしまいそうなピアニシモ。
地の底から、一気に主題が盛り上がる。

そして、何がすごいといって、メロディアスな部分になったときの、ゆったり流麗に、ときにうら悲しく奏でられる美しい旋律のかずかず。
あー、リストって、こんなに美しい旋律を書けていたのではないかと、発見の連続。”音楽”自体に心が揺れて、あふれ出てくるものを抑えることができない。

若手のメカニカルな演奏だと、メカニカルな部分がきっちり弾けるかどうかに気を奪われ、メロディーの部分で一息、そして、またメカニックを聴く、という感じになりやすいのが、デミジェンコの場合は逆。

緩徐部分で集中してうっとりして、オクターブやらでガンガンいくところで一息、また弱音に戻ってきて集中。

なので、終結部はまた聞かせどころで、美しさを保ちつつ、だんだんと墜ちていく、その集中力、胆力がすごい。聞いているほうも息ができないほど演奏者に同化してしまう感じで最後の一音を迎えました。

ぶらぼーーーーーー。

泣きました。リストで初めて。
リスト、好きになりそうです。良い曲です。伝説も、ソナタも。

今まで聴いたリストが、いかにメカニック中心の演奏が多かった、ということを痛感しました。リストだって、きちんと音楽があるんではないか。

長年のリスト苦手意識がここで払拭できたかもしれません。

【さらに続く】

2011年6月 4日 (土)

ニコライ・デミジェンコ ピアノ・リサイタル@すみだトリフォニーホール1

《ロシア・ピアニズムの継承者たち》 第3回 第1日
ニコライ・デミジェンコ ピアノ・リサイタル
2011年 6/4(土) 18:00開演

リストを聴いて初めて泣きました。
シューマンもショパンも、それは素晴らしかった。
もっと多くの人に聴いてほしかったです。

【プログラム前半】
シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化 op.26
シューマン: 謝肉祭 op.9

 

【プログラム後半】
リスト:伝説 S.175-1
  小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
リスト / ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

 

【アンコール】
ショパン:ノクターン嬰ハ短調 遺作
ショパン:ノクターン 嬰ハ短調 Op.27-1(※)
スカルラッティ:ソナタ 嬰ハ短調

※終演後ロビーに貼り出されたアンコール曲目では27-2となっていましたが、間違いです。

開始直前になってもホールが埋まらず、1階もまばら、2階中央数名、3階中央はゼロ、総数でおそらく200~300人くらいしか入っていなかった寂しい状況で開演しました。

人が少ないだけにホールは風呂場状態となるのではという危惧を持ちました。
案の定、最初の「ウィーンの謝肉祭の道化」は、とてもソフトで骨太で心地良い音ながら、やや響きがお団子状態で始まりました。

しかし、音楽が進むにつれ、ピアノもホールになじみ、聴く耳も慣れ、おそらくデミジェンコもコントロールしたのでしょう、どんどん音に透明度が増してきて、大変すばらしい音色を堪能することができました。

そして何よりデミジェンコの音楽。
この人は、全身が音楽で包まれているようです。
メロディーラインがくっきりと浮かび上がり、その歌い方はたいへんロマンティックであるけれども、くどいわけではなく、かといってさっぱりしすぎでもなく、心地良く、穏やかに流麗で、身も心もゆだねられてしまいます。

うねるようなスケールの盛り上がり、ハッと思わせる終止、単旋律の響きの極上の雰囲気、けっしてがさつにならない厚いフォルテ、消え入りそうなピアニシモ。ゆるい曲想になったときの、テンポをおとした、しみじみとした叙情。
泣けます。

曲想が次々に移り変わるシューマンは、ときにめまぐるしすぎて、ついていくのがかったるくなることがありますが、デミジェンコの手にかかると、そのニュアンスや音色の変化、緩急強弱の自在さがあまりに見事で、目が離せない、いや耳が離せない。

1曲目も良かったですが、響きが安定した2曲目の「謝肉祭」は、さらにすばらしかった。こんなにも楽しい謝肉祭を聴けたのは初めてかもしれません。

前半だけで、もう十分チケット代を回収してしまった最高の気分でしたが、後半さらに驚きは続きます。

【次記事へ続く】

2011年6月 1日 (水)

イリーナ・メジューエワコンサート情報

6/5(日)

杜のホールはしもとホール

13:30会場、14:00開演

パンフレットに、このブログのレビュー記事が掲載されているので、ご紹介します。

http://www.ajisai-concert.com/2011.html

Photo_2

Photo_4

リスト、ショパン、モーツァルトプログラム。

お手頃価格で、演奏は一流です。

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