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2010年10月23日 (土)

ラファウ・ブレハッチ リサイタル@みなとみらいホール

ショパンコンクールの興奮も冷めぬ中、2005年の覇者ブレハッチのリサイタルを聴いてきました。

前回のショパンコンクールはチェックしていなかったし、ブレハッチも特別追いかけておらず、来日時のテレビ放送の一部くらいしか聴いていません。
なので、じっくり腰をすえて聴くのは実質初めてでした。

【オールショパンプログラム】
(前半)
バラード第1番 ト短調 Op.23
3つのワルツ Op.34
スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20

(後半)
2つのポロネーズOp.26
4つのマズルカOp.41
バラード第2番 ヘ長調 Op.38

(アンコール)
英雄ポロネーズ
ノクターン嬰ハ短調(遺作)

プログラムはよく考えると大変地味な選曲です。
盛り上がって終わる曲が少ない。
このあたりにブレハッチのこだわりを感じます。

バラード第1番
抑えた序奏。主題は速めのテンポで、サラサラと流れる。
決して溜めない。仰々しくならない。
コーダも決して焦らず、インテンポできざむ。
まったく破綻がない。
清廉なバラードです。

ワルツ
リズムが実に安定していて気持ちが良い。
エレガンスがある。
遊び心にはやや乏しいか。
イ短調も淡々と寂しさを表現。
ブーニンワルツ(※)は、表現が似ているものの、高度に洗練されている。

スケルツォ第1番。
やや前がかり気味の主題の表現。
なめらかなスケルツォ。
荒々しさはない。
中間部もあっさり。
コーダはやはりインテンポで、心配を全く感じさせない安定感。

ポロネーズ。
これもまたかっちりとしたリズム感。
曲が地味なので、演奏はもっとメリハリがあって良かったかも。

マズルカ。
作り物ではない自然なリズム
デリカシーに富む
ブレハッチの繊細な個性に合っている

バラード第2番。
緩急緩のシンプルな構造の暗い色調のバラード
ここでも過度に叙情にながされず、薄めの作り。
中間部も落ち着いた盛り上がり。
コーダも最後まで落ち着き払う。

英雄ポロネーズ。
やはりアンコールは力が抜けるのか、伸びやか。
流麗な英雄。
中間部左手オクターブ連打は、他に類をみない滑らかさと安定感。
そして落ち着き払ったコーダ。

ノクターン嬰ハ短調。
今年相当聴いたアンコールの定番。
速いテンポ。
軽いタッチ。
ディナーミクのつけ方が変わっていた。
超デリケートなコーダのスケール。

ショパンコンクールでは、かなり個性の強い演奏をたくさん聴いたこともあるのか、ブレハッチの演奏は”正しいショパン”の見本のように感じました。
コンクールの時にショパンの再来と言われた、ということが納得いきました。

演奏姿勢も美しく、礼儀も正しく、演奏は気品がある
良い育ちなのだなあ、と思わせます。
やや後傾して弾く姿は、ツィメルマンを彷彿とさせます。

全体的に速めのテンポ設定で、溜めを極力排除し、前へ、前へというモダンなリズム意識を感じます。
クラシカルなベースに、モダンな表現。
現代のクラシックピアニストに要求される要素をしっかり持っています。
そして、技術が非常に安定していて、ハラハラすることが全くない。

その裏返しとして、危険な香りが全くない、安全なショパンになってしまっているということはあります。
もっと魂の奥底を揺さぶるような、訴えかける力が欲しい気がします。
これだけハイレベルな演奏をしてもらって、贅沢な注文ではありますが。

今のままの路線で、行き着くのはどこなのか。
ツィメルマンの後追いではもったいない。
まだ若いだけに、さらなる進化を期待したいです。

※ブーニンワルツ
スタニスラフ・ブーニンが1985年のショパンコンクールの予選で弾いて、強烈なインパクトを日本人に与えた

※今回のショパンコンクールで優勝したユリアナ・アヴデーエワの表現とは真逆。ショパンコンクールは変わっていくのでしょうか。

※スケルツォ1番、バラード2番、英雄ポロネーズはヌーブルジェの名演があります。
魂を揺さぶるインパクトはヌーブルジェの方があると思います。
まあ、ファンの言うことではあります。

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コメント

こっこさま:

ダルベルト、行きましたよ(^^)
今年はこれから芸術の秋。

たくさん行く予定です。

お返事ありがとうございました!
他のピアニストの方へのまいくまさんの評も読ませていただき、ティル・フェルナーさんの公演も行ってみたいな、と思いました。昨年はいろんな方のピアノを聴きに行って、ミシェル・ダルベルトさんやアンティ・シーララさんが気に入りました。
今年はラファウさんにつぎこんでしまってー。
こちらのブログを参考にさせていただきますねー。

こっこさま:

いらっしゃいませ!

>今回は5公演も行ってしまい、その度に引き込まれるタイミングは違うものの、心地好さに中毒状態になりまして…。

5公演とはすごい。それだけ聴いても飽きそうにない、というのが魅力ですね。
少し否定的なことも書いてしまいましたが、お気に触ったらお許しください。

>まだ若いので、これからもっと深化して個性が強まるのかもしれません。見守りたいと思います。

これからの10年くらいが大事なのだと思います。
大ピアニストになってほしいですね。

はじめまして!

ツイッターから伺いました。ラファウさんのファンの者です。みなとみらいの評を大変興味深く読ませていただきました。演奏全体の分析はさまざまな演奏者を聴き比べていないとできないと思いますので、なるほどこのように言葉に換えることができるのかーと納得です。
ラファウさんのファンは彼の技術、人柄もそうなのですが、音色に魅了されていることが多いようです。私も知るまでは、どちらかというとインパクトの強い演奏に惹かれる傾向があったのですが、ラファウさんの演奏を聴くようになって、音色の繊細さに夢中になってしまいました。今回は5公演も行ってしまい、その度に引き込まれるタイミングは違うものの、心地好さに中毒状態になりまして…。強烈な毒ではなくて、気付かないうちに広がっているんですね。
そのため、ファンの間では、ラファウさんの演奏は表現できない…という合意のようなものがあります。
まだ若いので、これからもっと深化して個性が強まるのかもしれません。見守りたいと思います。

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