コンサートの予習は必要か?
今日の読売新聞朝刊文化欄に、ピアニストで文筆家の青柳いづみこさんによる「私の鑑賞術」という一文が載っていました。
「コンサート『予習』しないで」という見出し。
演奏は比較して聴くものではなく、コンサートにはその瞬間にしか味わえないおもしろさがある。予習すると先入観から自分の感性で聴けなくなる・・・
という内容でした。
私はそうとばかりは言えないと思うのです。
もちろん、初めて聴く曲から新鮮な感興を呼び起こされる、ということも多々あります。
しかし、クラシック音楽というのは再現芸術ですから、同じ曲が何度も何度も演奏され、基本的には昔と同じように演奏されることを予見し、それを楽しむものです。
同じ曲でありながら、演奏家によって、予想や先入観を軽く上回る感動を得ることができる。それがクラシックの醍醐味でもあるといえます。
また、演奏を聴く方の感受性や素養にもよるでしょうが、形式やメロディーのはっきりしない曲を初めて聴いても、正直、よくわからない、というのが本当のところではないでしょうか。
そういう曲を何の予習もなしに聴いても、なんだかわからないまま終わってしまう。
クラシックのコンサートは安くないですから、予習なしは勇気がいります。
例えば、去年のヌーブルジェのサントリー・ホールでのリサイタルプログラム。
バッハ/ブラームスのシャコンヌ
ブラームスのソナタ第2番
ベートーヴェンのハンマークラヴァーア・ソナタ
はっきり言って、「こんなマニアックなプログラム」にもしクラシック初心者を「ヌーブルジェはとにかく凄いんだから」と強引に連れていったとしたら、絶対顰蹙(ひんしゅく)ものでしょう。
シャコンヌくらいならメロディーは有名ですからわかるかもしれませんが、ブラームスは決して口当たりは良くないし、ハンマークラヴィーアに至っては、あれを初めて聴いて「その瞬間にしか味わえないおもしろさ」を感じられる人はよほどの芸術的素養のある人だといえましょう。
初めて聴いたら、普通は40分間が辛い曲です。
私はピアノばかり聴くのでオーケストラは苦手。
でもピアノのレッスンをする上でオーケストラを聴く事も必要と考えて、少しはコンサート通いをしようか、などということをピアノの先生に話してみました。
そうしたら、「よく知らない曲を聴きに行くのは時間とお金の無駄」とあっさり言われてしまいました。
そうだよなあ、と即納得。
だから、今度ヌーブルジェのリスト:ピアノ協奏曲第2番と、あわせてマーラーの交響曲第1番を聴きますが、両方ともよく知らなかったので、きっちり予習していくつもりです。
※ラ・フォル・ジュルネでシャマユの演奏によるシューマン/リストの「献呈」は、初めて聴く曲でありながら、とても感動しました。
わかりやすかったですし。
でも、その後、何十回も繰り返し聴いて、より深く楽しめることになった事も確かです。
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