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2010年6月 6日 (日)

イリーナ・メジューエワ リサイタル@杜のホールはしもと・ホール

たったの2,700円では全く申し訳ない、恐ろしく密度の高いリサイタルでした。
昨年の夏からリサイタルに2回、レクチャーコンサートに3回通い、今回6回目となりますが、よく知った曲をまともなホールで聴けたのが初めて。
今までも十分インパクトがあったものの、今日は良い音響でしかも最前列で聴いたので、しばし呆然とするくらい圧倒されました。

こんなに凄い芸術家がクラシック界では場末の日本のカルチャーセンターやら地方都市の小さなホールで格安で演奏活動をしていて、もったいないような、ありがたいような、複雑な気持ちです。

【前半】
シューマン:アラベスク op.18
シューマン:子供の情景 op.15
リスト:コンソレーション 第3番
リスト:ラ・カンパネラ

【後半】
ショパン:幻想即興曲 op.66
ショパン:ノクターン 嬰ハ短調(遺作)
ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49
ショパン:エチュード
        変イ長調 op.25-1「エオリアンハープ」
        ヘ短調 op.25-2
        ホ長調 op.10-3「別れの曲」
        イ短調 op.25-11「木枯らし」
        ハ短調 op.25-12「大洋」

【アンコール】
ショパン:ワルツ 第6番 変ニ長調「小犬のワルツ」 op.64-1
ショパン:ノクターン 第5番 嬰ヘ長調 op.15-2

アラベスクは先日ボブウォツカを聴いたばかり。
繊細で変化に富んでいたボブウォッカと違い、まじめでストレートな作りです。

子供の情景でも、可愛らしい子供を微笑ましく想像させるような感覚的な表現ではなく、理知的に集中して音楽そのものを聴かせようとする感じ。

リストに入ると、クリアな音質に変えてきました。さすがプロ。
コンソレーションはリストにしては地味な曲ですから、メジューエワも落ち着いてじっくりと聴かせます。

と、このあたりまでは、曲想的にメジューエワの特徴がまだそれほど発揮されていません。

リストのラ・カンパネラは超絶技巧が売りの曲。
メジューエワは一般的な名手が弾くスピードの7~8割くらいのテンポで演奏を始めます。このスローなテンポで、この曲らしさが出るのだろうか?
そんな心配は全く無用でした。
最後までスローテンポを貫きましたが、全く弛緩することなく、極めて高い集中力で、この曲の特徴を見事に表出したではありませんか。
引き込まれずにはおれませんでした。
まるで今時の超絶技巧のピアニストたちの演奏に挑戦しているかごとくでした。

後半にはいり、まずは超有名曲の幻想即興曲
中身よりやや表面的華麗さに勝るこの曲も、メジューエワの手にかかると深い芸術作品に仕上がります。
最初の左手のソ♯のオクターブが、普通フォルテで入るところ、なぜかメゾピアノくらいで鳴らす。いきなり「あれ?」と思わせる。
もしやとてもデリケートに弾くのか、と思いきや、さにあらず。
そこそこスピードはありましたが、プロにしては最速の部類ではなく、一音一音を全くごまかしなく、すべての音を聴かせる、という感じ。
ディナーミクをはっきりとり、およそ、流麗で気持ち良いだけに終わらせない。

ノクターン嬰ハ短調は2度目。
以前は音響最悪のホールだったので、今日は美しい響きも堪能。ですが、美しさよりも高い緊張感の方が際立ちます。呼吸を止めて聴かなければならないくらい。

そして、今日の圧巻が次の「幻想曲
ここ数年で何人ものピアニストを聴きましたし、CDも何枚か持っていますが、こんなに「凄み」のある幻想曲は初めてでした。
一般的には曲のタイトルどおり、ファンタジー溢れる演奏をする人が多いことでしょう。
メジューエワの演奏はおよそファンタジーなどと甘ったるい言葉では片付けられません。
曲想の変化やディナーミクを大きくとり、重い情念に満ちた、それでいて決して感情にながされず理知的に、ショパンの心の底にある憂鬱で暗いものを描き出しているようでした。

エチュードはすべてゆったりとしたテンポ。
上辺の技巧に走らず、音楽をとても大きく感じさせる。
ゆっくりはっきり、強烈にきざむリズムが、爆発的な迫力を生み出している。
特に「木枯らし」と「大洋」は脳天を揺さぶられるような強烈さでした。

アンコールの「小犬のワルツ
うーん、小犬ではないかも。
ノクターン15-2
しっかり聴きなさいと、最後まで癒してくれないメジューエワ。

メジューエワの辞書には、「甘い」とか「優しい」とかいう言葉はないのでしょうか。

とにかく、大変な個性であることは間違いありせん。
好き嫌いはあるかもしれません

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