最近のトラックバック

« ピアノ発表会へ暗雲~奥が深すぎるクラシック・ピアノ | トップページ | シューマン:ピアノ協奏曲を予習 »

2010年3月21日 (日)

レイフ・オヴェ・アンスネス&ノルウェー室内管弦楽団@オペラシティ・コンサートホール

早くも今年のベスト・コンサートを聴いてしまった気分です。
春分の日である今日、東京オペラシティ・コンサートホールで行われたマチネ。
アンスネスとノルウェー室内管によるモーツァルトの協奏曲の演奏は、18世紀後半にウィーンで行われた、モーツァルトの予約演奏会を実際に聴いてしまったような、実に感動的で素晴らしいものでした。

至福の時間を過ごすことができました。

【前半】
モーツァルト:交響曲第35番 ニ長調 K.385「ハフナー」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
【後半】
グリーグ:ホルベルク組曲 Op.40
モーツァルト:ピアノ協奏曲:第24番 ハ短調 K.491
【アンコール】
モーツァルト:ピアノ協奏曲:第14番 変ホ長調 K.449から 第3楽章
ショパン:ワルツ 嬰ハ短調 Op.64-1

モーツァルトの協奏曲はアンスネスの弾き振りで、ピアノは屋根を取り、をオケに正対させ、つまり聴衆に背を向けて振る形でした。
また、オケ単独曲では指揮者はおらず、コンミスがリードしていました。

アンスネスとノルウェー室内管が奏でるモーツァルトはミューズの神が舞い降りたごとく、全編これ音楽にあふれており、やや早めのテンポでぐいぐい推進しながらも、しっかりしたリズムを保ち、息もバランスもぴったり。
また、ピアノの音がオケに埋もれることがない

オケの音は歯切れがよく、なよなよしておらず、小規模な編成なのに実に豊かな音量で響いてきて、ディナーミクの見事さ、アーティキュレーションの弾きわけのすばらしさなど、オケをあまり知らない私でも、非常に堪能できました。

オケの奏者たちは皆、音楽にノリノリの感じで、特に、私が正対してしていた、ちょっと西川史子に似たフルート奏者(ややハスキーな演奏をする)などは、演奏中ずっと音楽に身をゆだね、楽しそうに笑みをこぼしており、それを見ていてるだけでも幸せな気分になってしまいました。

「ハフナー」では指揮者がいなくても息のあったところを十分見せてもらえました。

23番の協奏曲。
第1楽章、明るくとても華やかで流動感あふれている。カデンツァはモーツァルトのオリジナル。このカデンツァが実に即興性にあふれていて、やや崩しすぎ、と思う向きもあるかもしれないけれど、カデンツァなんだから、とアンスネスが言っているようでした。
第2楽章は過度にセンチにならずとも、美しくも悲しい音楽が十分伝わってくる。
第3楽章も早めのテンポでぐいぐいと推進するも、前のめりになるという感じではなく、極めて安定していて安心して聴いていられました。

前半のカーテンコールはたぶん4回はあったでしょうか。
私もそうでしたが、早くも聴衆は興奮気味でした。

後半のグリーグ。
ご当地のノルウェーものですね。
私は始めてでしたが、古典的形式にのっとりながら、美しい旋律。
わかりやすかったです。
特に、第4曲アリアはとても悲しげで印象的でした。
チェロの旋律も印象的。

モーツァルト24番の協奏曲
23番とは打って変わったこの重苦しい曲をどう表現するのか興味津々。
第1楽章のオケによる減七の和音の出だしが終わったあとの、トゥッティ。
弦は強く引き込み、専門的には何というのでしょう、ピアノだったらノンレガート奏法的に、一瞬にしてハ短調の世界に連れて行かれました。
アンスネスのピアノは美しいながらもやや陰を作り、流麗な中にも悲しみがあふれている。
オーケストラとピアノがピッタリ溶け合って、絡み合い、感動してしまいました。
カデンツァはたぶん、アンスネスによるものだと思われます。
幻想曲風の自由な曲想で、最後は第1主題による力強いパッセージ。

第1楽章でもこの時期のモーツァルトの曲の特徴で、十分管楽器は活躍しているのですが、明るい第2楽章からは、管楽器がさらに活躍します。
弦と管とピアノによるコラボ。
美しい。

第3楽章はまたもや、大丈夫か、と思うほどの早いテンポ。
でも崩れない。
ここでも主題がどんどん変奏されながら、オケとピアノが見事な掛け合いを演じる。
もう、他の聴衆がどうしているかわからないほど、音楽に没頭してしまいました。
この曲は最後までピアノが弾かれるので、ピアノの最後の決めと曲の終わりが同じであることもあって、格好良い。
終わったと同時に怒濤のような拍手が起こったことはいうまでもありません。
正直、私はスタンディングオベーションしたいくらいでした
皆盛り上がっているのだけれど、日本人ってやはりおとなしいです。
ブラボーは少しありましたが、スタンディングはなし。
こういう良い演奏を聴いたときには、してみたいのですが。

アンコールもモーツァルト14番協奏曲の第3楽章。
明日、トッパンホールでやる曲ですね。
これも引き続き素晴らしい。
ロンド主題が特徴的で、後をひきます。
うーん、明日も聴いてみたくなってしまう。

アンコール2曲目。
ショパンワルツ。
これも過度にセンチにならず、あっさり目の表現なのですが、それがかえって趣味がよくて、ショパンのロマンティシズムが十分伝わってきます。
飽きのこない演奏というのでしょうか

アンスネスは、近年だいぶ人気が高まっていたようですが、私は不覚にもノーチェックでした。
昨年、テレビでラフマニノフの協奏曲を弾いているのを見たときは、それほどインパクトを感じず、その後シューベルトのソナタをCDで聴いたものの、良いけれども夢中になる、というほどではありませんでした。

今日わかったのは、彼の演奏はライブの方がずっと良い。
もう一度聴きたいピアニストのリストに入りました。
絢爛たるテクニックで外見華やかに演奏するタイプでなく、とにかく”音楽”を奏でようというタイプです。

いずれ、リサイタルを聴いてみたいです。

とにかく、今日は幸せな気分です。

※最後の挨拶が終わり、オケが引き上げ始めたとき、私は先般の内田光子のベルリン・フィルとのコンサートを思い出して、オケが去った後もコールしてみようと思い立ち、消えそうな拍手をもう一度盛り上げるべく、かなり強く目立つように拍手してみたところ、一部の聴衆がそれを感じてくれて拍手がやや盛り返し、いよいよ舞台袖に退こうとしているオケの団員が不思議そうに振り返ってくれました。

でも、やはりオケがいなくなってしまったら、サーっと拍手は退いてしまい、私の試みは失敗しました。
演奏の善し悪しで、もっとはっきり意思表示できるようになりたいものだなあ、とまた思った次第です。

※モーツァルトの第24番の協奏曲は、もちろん、以前から好きですし、名曲だと思ってはいました。
今日、アンスネスとノルウェイー室内管との名演奏を聴いて、ますますこの曲のすばらしさを感じ入りました。
20番代以降の協奏曲は、皆、名曲とされていますが、おそらく最高の部類だし、古今の他の作曲家の有名な協奏曲と比較しても、トップレベルであると言えるでしょう。

« ピアノ発表会へ暗雲~奥が深すぎるクラシック・ピアノ | トップページ | シューマン:ピアノ協奏曲を予習 »

他のピアニストの記事」カテゴリの記事

コメント

TAOさま:

いらっしゃいませ(^o^)

>本当に至福の演奏でしたね!

ハイ、無我夢中になれたのは久しぶりです。

>まいくまさんのレビューには同感するところが多くて何度も頷きながら読ませていただきました。

たぶん、あの盛り上がり方だと、同じように感じた方がたくさんいたのではないかと思っています。

>フルートの女性も素敵でしたね!

ほんとうに終始にこやかで、音楽を心から楽しんでいるようでした。アンスネスと深い信頼関係にあるのだなあと思いました。

>じつはシュリメも聴いていて、私が行ったのは白寿ホールの方なのですが、
自作の曲とバッハを1セットとして弾くいまどきのDJのようなセンスに痺れました。

おお、結果的には白寿も行きたかったです。

>そんなわけで、お薦めのヌーブルジェに激しく惹かれています!

ヌーブルジェは、アンスネスとも、シュリメともまた全然ちがったタイプです。
テクニシャンですが、それだけでない、訴える力をもっています。
ぜひ、ご贔屓に。

はじめまして。
昨日私もアンスネスのコンサートを聴き、
検索でこちらに辿り着きました。
本当に至福の演奏でしたね!
まいくまさんのレビューには同感するところが多くて何度も頷きながら読ませていただきました。
もともとアンスネスは好きで聴いていたのですが、テンポの良さと安定感、ツヤを消した深い音色、なにより心から音楽を楽しんでいる様子にうっとりしました。
フルートの女性も素敵でしたね!

じつはシュリメも聴いていて、私が行ったのは白寿ホールの方なのですが、
自作の曲とバッハを1セットとして弾くいまどきのDJのようなセンスに痺れました。

そんなわけで、お薦めのヌーブルジェに激しく惹かれています!

では長々と失礼しました。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1169149/33875238

この記事へのトラックバック一覧です: レイフ・オヴェ・アンスネス&ノルウェー室内管弦楽団@オペラシティ・コンサートホール:

« ピアノ発表会へ暗雲~奥が深すぎるクラシック・ピアノ | トップページ | シューマン:ピアノ協奏曲を予習 »

twitter

2016年5月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ