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2009年11月28日 (土)

内田光子ピアノ・リサイタル@サントリーホール(2

前の記事の続きです。
個別の曲の感想です。

前半は、モーツァルトのイ短調ソナタを弾いたあと、クルターク~モーツァルトロンドまではひとくくりで演奏しました。

イ短調ソナタは、まずは挨拶がわりと腕ならしでしょうか。
第1楽章はやや早めのテンポ。情熱あふれる部分と、音がピアノでゆるむ部分の対比を非常に明確にとっており、起伏のある表現でした。それは展開部のフォルテシモとピアニシモの交代でも、大きなディナーミクの変化をとっていました。
第2楽章は一転してテンポを落とし、実にしっとりと歌います。
モーツァルトにしてはやや叙情的すぎるか、でも、ロマン派的ベタベタ表現まではいかない、というような絶妙なバランスであったと思います。
第3楽章はペダルの使用を抑え、やや軽やかな開始。そして、これも対比とメリハリがあり、前への推進力も十分。時折、フレーズの切れ目で一呼吸おく、そのおきかたがいやらしくなくて効果抜群。
名演でした

クルタークはハンガリーの現代作曲家。
バルトークの後を継ぐようなポジションのようです。
バルトークのミクロコスモスに匹敵するような練習曲をたくさん書いていて、その中からの演奏でした。

そこに、バッハとモーツァルトを絡めるという、意欲的なプログラム。

クルタークは初めて聴きました。
非常にシンプルな曲。バルトークのミクロコスモスの雰囲気に似ている曲もありました。
バッハのフーガの技法が続けて弾かれましたが、違和感がない。
フーガの技法は、ペダルはつなぎの補助的な使用で、4声のそれぞれの声部を非常に明確に弾き分けていました
先週聴いたシェプキンとは真逆のアプローチで、内田光子は旋律の「線」を重用ししていることがわかりました。
そこでわかったのが、クルタークの曲も、右手と左手の「線」からできているような曲です。

PPPPPだのPPPPだのといった指示があるクルタークの曲の間に、バッハのフランス組曲5番のサラバンド
これが、クルタークの後にすっぽりおさまる。

このサラバンドが、すばらしく感動的な演奏でありました。
内田光子は、右足を完全に後ろに引いて左半身のようなポジションをとり、つまり、ダンパーペダルは全く踏まず、左足では少しソフトペダルのコントロールをしていたようですが、基本的に、指先のコントロールだけで、この曲の寂しげな旋律、そしてほのかな響きを軽やかなタッチで、気品よく表現しました。
あまりに素晴らしかったので、このままガボットを弾いてもらえないだろうか、と思うくらいでした。

前半最後には、モーツァルトのイ短調ロンド。
最初のイ短調ソナタは、このイ短調ロンドと呼応していたのですね。

ヌーブルジェが金沢で弾き、先日菊池洋子でも聴いたばかりです。
この曲に期待するのは、いつも、モーツァルト晩年の寂しい感じをどう表現してもらえるのか、ということでした。
ヌーブルジェは超デリケートではありましたが、まだ「死んでしまうような寂しさ」という境地にはありませんでした。菊池洋子はまだまだ元気なモーツァルトでした。

それに対し、この日の内田光子の演奏はまさに私が求めていた「寂しさ」を十分味合うことができました。
ゆったりとしたテンポ。一音たりとも気を抜かない集中力。
そして、中盤の明るい部分の盛り上がりもニュアンスたっぷりで、しかし、その盛り上がりがあくまで、一時の気休めなのであって、また寂しく孤独な世界に帰っていくのです。
曲が終わって拍手をしているうちに、涙があふれてくるのを抑えることができませんでした。
前半終了後3回カーテンコールがありました。
他の聴衆も、同じように感動したのだと思います。

休憩後のシューマン:幻想曲ハ長調
もしかすると、ライブで聴くのは初めてだったかもしれません。
長い曲なので、最近はとんと聴いていませんでした。
若いときはポリーニのCDなどをよく聴いていて、それでイメージが固まっていました。
前半とは明らかにタッチを変えてきて、深くしっかり鍵盤を押しています。
へたな演奏だと、ずっと同じようにだらだらしまりなく聞こえてしまいかねない曲です。
内田光子はそれぞれのパーツを十分に弾きわけて、シューマンの気分の移ろいや、うねるような感じをよく出していて、聴きごたえは十分。そして、柔らかさ、華麗さ、迫力が同居しています。
第2楽章は勇壮かつ壮大な曲で、技術的にも難しそうです。やや乱れるところもありましたが、音楽としては問題なく、熱演でした。
圧巻は第3楽章
実を言うと、幻想曲をCDで聴くと、第2楽章で終わった気になってしまって、第3楽章をしっかりまじめに聴いた記憶はあまりないのですよね(^_^;)
この幾分ベートーヴェンの後期ソナタ的雰囲気のある緩徐楽章を、またゆったりとしたテンポで、集中を切らさず、少ない盛り上がり部分は、なんとも宇宙的というか、気高さの極地というか、魂を持って行かれてしまうような、そんな感じがしました。

アンコールの1曲目はシューマン:謝肉祭から軽めの曲。
いかにもアンコールピースなので、あっ、今日はもう終わりだな、と思いました。
カーテンコールが続き、2曲目を弾くようです。
な、なんと、ベートーヴェンの第30番ソナタ
アンコールでありながら、集中が落ちず、ニュアンス、デリカシーにあふれた、ベートーヴェンの後期にふさわしい、これまた素晴らしい演奏!
第1楽章だけではもったいないようで、ここで拍手してよいものか、迷ったくらいです。

ライブでの内田光子は、超一流の芸術家のみがもつ、強く人を魅了する力を持っていることを感じました。

実に素晴らしい一夜でした。

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