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2009年6月22日 (月)

ヌーブルジェ・リサイタル@サントリーホール【第三報】

昨年のル・ジュルナル・ド・ショパンで初めてヌーブルジェの演奏に触れ、光る才能に気がつきました。
その時感じたヌーブルジェの素晴らしいところが、今回のリサイタルでは余すところ発揮されていました。
「これを待ってたのだよ!」
と思わず叫びたいところでした。

その素晴らしさとは、

明るくキレの良いタッチ。
爽やかで透明な音色。
低音の確信に満ちたタッチ。
にごらない芯のある強音。
ダイナミックレンジの広さ。
音楽に没入する集中力。
見得を切るような大胆な終止。
意表をつく絶妙の「間」
抜群のリズム感。
知性的な音楽の構成力。

などです。

クリアな音色は今回の演奏の全編で展開されました。
特に、アンコールの現代曲風の自作アラベスクでは、さらにとぎすまされた音を奏でていました。
この明るさと透明感が何といっても魅力です。
軽やかなので重量感があるという音ではありません。
なので、ブラームスのあの重苦しい感じのソナタでも、フレッシュに感じます。

にごらない強音は、ブラームスソナタやハンマークラヴィーアの冒頭の和音が典型でした。
たった数小節聴いただけで、あっという間にヌーブルジェの世界に引き込まれました。
強音に関しては、ツィメルマンより魅力的だと思います。

大胆な終止もいたるところで発揮されました。
ワッと終止して、しばしの間。そして次ぎのフレーズが始まる。
うっかりすると、いやらしくなりそうなものですが、センスが良いので、ひたすら格好良いです。
とくに、この表現法がとても効果的だったのが、ハンマークラヴィーアの第2楽章でした。
この楽章を、あんなに楽しく鑑賞できたのは初めてです。

集中力は緩徐的な部分で発揮されます。
ブラームスソナタの第2楽章のテーマや、ハンマークラヴィーアの第3楽章です。
遅いところは、遅めに弾くのがヌーブルジェの流儀のようです。
その抒情は知性でコントロールされ、情に流されて音楽が揺れることがありません。
しかし、その端正に刻まれるゆったりとしたリズムの中に、なぜか機械的ではない、ほのかな詩情がにじみ出てくるの
が心憎いのです。

ブラームスソナタとハンマークラヴィーアは、ソナタとしての構成力も見事でした。
楽譜を見てきっちり準備していったことも幸いし、ヌーブルジェが意図するソナタという構築物をしっかり受け取るこ
とができました。

モダンなリズム感が、実は音楽を「楽しむ」という部分では一番効いていると思います。
今でこそ、音楽はほとんどクラッシック中心に聴いてしますが、それだけというものでもなく、カラオケではサザンも
チューブも歌います。
かつては、アメリカンポップスやフュージョンなども少しは聴きました。
ロックはほとんど聴きませんが、スタンダードな名曲では十分にのれます。
身体には現代の音楽のリズムや”のり”がしみついています。
ヌーブルジェのリズム感は、その”のり”の感覚を刺激します。
今回の演奏では、ハンマークラヴィーアの第4楽章のフーガがそうでした。
聴いているうちに、身体がスウィングしてくるのがわかりました。
指ではリズムを刻まずにはいられない。
不協和音も混じり、似たような音階が何度も出てきても飽きることがなく、あの倍、フーガが続いても大丈夫だったか
もしれません。
あの難解、といわれるフーガが、こんなに楽しいとは!

こういう聴き方が果たして良いのかどうかわかりません。
オーセンティックなクラッシックファンの方には怒られそうです。
でも、楽しいものは楽しい。
もう一度聴きたい、と思わせる。

前にも書きましたが、コミック「ピアノの森」の阿字野のセリフが好きです。
「ピアニストには2種類しかいない。もう一度聴きたいと思うか、思わないかだ」

ヌーブルジェは、同じ曲であっても、もう一度聴きたいと思わせてくれます。
ツィメルマンももちろん、もう一度聴きたいピアニストではあります。
しかし、どちらか一人選べ、と言われたら、今ではヌーブルジェとなりました。

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