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2009年6月19日 (金)

ツィメルマン(ツィマーマン)リサイタル@横浜みなとみらいホール

ツィメルマンはヌーブルジェに出会うまで、私の中では現役最高のピアニスト。
それは、ヌーブルジェに出会っても、まだ変わらない、と以前書きました。

今日(6/18)、ツィメルマンのリサイタルを聴いて、もしかすると、明後日のヌーブルジェのリサイタルによっては、その順位が入れ替わるかもしれないと思いました。

クリスチャン・ツィメルマンの2009年日本公演もあと2回。今日は横浜みなとみらいホールでした。

プログラムは
【前半】
1.J.S.バッハ:パルティータ第2番 ハ短調 BWV826
2.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111
【後半】
3.ブラームス:4つの小品 Op.119
4.シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲

アンコールはありませんでした。

ツィメルマンの今日の素晴らしさは、力を抜いた弱音の天国的な美しさでした。
その美音は、私の知らない演奏家を含めても、間違いなく世界一であることでしょう。
残念ながら、ヌーブルジェもまだ及ばないでしょう。
特にそれが最もよく現れていたのが、バッハ:パルティータと、ベートーヴェンの32番ソナタの第2楽章終結部です

パルティータ第2番は、CDでもライブでも、今までに聴いたことのない、ユニークなものでした。
しかし、実は今日の演奏の伏線はあったのです。
ツィメルマンの3年前のリサイタルを聴いたとき、アンコールでバッハの小品(曲目は忘れました)を演奏したのです
が、その時の音が、恐るべき美しさであったことを思い出しました。
その時の美音が、今日のパルティータで蘇ったのでした。

シンフォニアの序奏は意外とインパクトがなく始まります。
中間部に入ってからです。美音があふれ出してきました。
フーガは快速ですが、とにかく響き重視です。今まで体験したことのないパルティータが鳴っています。

ペダルは非常に細かく踏み換えています。しかし、踏みっぱなしということはなく、響きを作り出しているのはペダリングではなく、あくまで指先のタッチであることがわかります。
上体はほとんど動かず、腕には全く余計な力が入っておらず、恐るべき軽やかさです。

アルマンドがゆっくり始まります。美しい響きはさらに高まり、リピートされると、さらにデリカシーを増します。
あまりの美しさに、ここで早、感極まってしまいました。
もしかしたら、サラバンドでまた泣かされるかもと思いきや、これはこざっぱりした演奏。
ロンドーがなんとも言えぬリズム感で、またチャーミングで素晴らしい。一度目は右手の旋律を、リピートでは左手を強調するところなど、印象的。
カプリッチョは快速。これも響き渡ります。

先日のルイサダのフランス組曲はショパン風でした。それは、アゴーギクを使用しての表現でした。
今日のツィメルマンは、音の響きによる新しいバッハの表現でした。
この演奏には賛否両論あろうかと思います。
私は、今日のリサイタルで一番このパルティータに感銘を受けました。

2曲目のベートーヴェンピアノソナタ第32番
第1楽章、緊張感あふれる序奏と、超快速の第1主題。そして叙情的な第2主題。
第1主題の早さは、私の知る限り、グールドに次ぎます。
ディナーミクの変化が大きく、立派な演奏です。
がしかし・・・
なんだか中期のダイナミックなソナタを聴いているような感覚にとらわれてしまいました。
バックハウスやリヒテルが表現するような、やや不器用であって、時折漠とした寂しさが表出するような、後期ソナタらしい味
わい深さが、やや不足しているのではないか・・・
贅沢な注文ではあります。
第2楽章のアリエッタ
主題、第1変奏、第2変奏まではしっとりと進みます。
問題は第3変奏。ちょっと速すぎないでしょうか。いくら何でもあれだけ速いと、味もそっけもなくなってしまいます

第4変奏、第5変奏は、いよいよ天国的な境地です。高音部のパッセージや、そのトリルの美しさといったら、この世
のものとは思えない美しさ。昇天しそうです。
そして、コーダのトリルの切り替えで、無事昇天しました。
浮いたり沈んだり、いろいろ考えさせられた演奏でした。

休憩後のブラームス
ベートーヴェンの最後のピアノ・ソナタに続いて、ブラームス最後のピアノ曲です。
これまた、ブラームスの晩年の境地を表現してほしい曲であります。
がしかし、私の中に持っているこの曲のイメージと、今日のツィメルマンの演奏はどうもマッチしませんでした。
まず、全体にテンポが速すぎて、語るような感じがなく、また、和音の連打もノリが良すぎて、屈折感がありません。
4曲目ラプソディの終結部の和音連打は、ツィメルマンには珍しく、音がやや濁ってしまっていました。

ツィメルマンの弱音は超一流でステージが違うと思いますが、残念ながら強音は普通の一流かもしれません。
全体を通じて、大きな音になると、やや音楽が雑になるような気がしました。

シマノフスキの変奏曲
初めて聴きました。
ピアノの性能を生かすような曲。
ピアニスティックな美しいパッセージと、打楽器的な大音量を織り交ぜています。
かといって、現代曲にありがちな難解な感じはせず、民謡が題材だけに、ある程度旋律を感じながら聴けました。
もちろん、ツィメルマンは見事に弾ききりました。
演奏効果は確かに抜群。ただ、音楽としてどうかというと、どうも私には技巧的な部分しか迫ってこず、またその技巧
がかなり仰々しい。
果たして、ツィメルマンが、演奏後ふらふらになるほど魂を入れ込んでまで、紹介すべき曲なのかどうかは?です。
もっとも、私には近現代の曲を四の五の言うだけの力はないので、素人の戯言ではあります。
確実なのは、おそらくこの曲を今後、CDでもライブでも聴くことはないだろうな、ということです。

さて、以上のように大好きなツィメルマンではありますが、納得いく演奏と、そうでない演奏があって、今日のリサイタルは必ずしも大満足というものではありませんでした。
ですので、明後日、ヌーブルジェが3曲とも大満足させてくれると、私の中では逆転が起こる可能性が出てきたわけで
す。
選曲はたぶん、ヌーブルジェの方が合っていると思います。

今ツィメルマンで聴きたいとしたら、世界一の弱音の美音を生かせるような曲です。
例えば、バッハのフランス組曲、ショパンの夜想曲、シューベルトの即興曲、ドビュッシーなどになるでしょうか。

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