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2009年5月の27件の記事

2009年5月29日 (金)

来年のラ・フォル・ジュルネのびっくり企画

「ぶらあぼ」6月号の「小耳大耳」に載っていた記事からです。

来年のラ・フォル・ジュルネのテーマがショパンであることは、すでに知っている方も多いと思います。

ルネ・マルタン氏が温めている企画のひとつに、

「カーテンで観客には隠された状態で複数のピアニストが演奏し、公演の最後に誰が演奏していたかを明らかにする」

というものがあるそうです。

これは驚きの企画です。

誇り高きプロの演奏家が、このようなお遊びにつきあってくれるものなのでしょうか?
ラ・フォル・ジュルネの目的である、クラッシックの大衆化のためなら一肌脱いでくれるものなのでしょうか?

失礼ではないのかなぁ、という感想と、逆にこれは大変面白い!と思ってしまう、ミーハーな自分がいます。

おそらく、こんなお遊びができるとしたら、若い演奏家。

とすると、メンバーは

  ヌーブルジェ、コロベイニコフ、バル=シャイ、小菅優、児玉桃

とかだったりして!!

本当に実現したら、これは聴かねばなりません。

半分くらいは当たるでしょうか。
少なくとも、ヌーブルジェの演奏をはずすわけにはまいりませんね。

2009年5月28日 (木)

ラ・フォル・ジュルネ2009のテレビ放送

NHK教育テレビの「芸術劇場」で今年のラ・フォル・ジュルネの模様が放送されるとのことです。

放送日時:6月5日(金)の22時30分~24時45分

前半はレポート、後半は5/4の公演が放送されます。

残念ながら、ヌーブルジェの公演の放送はありません。

ですが、何らかの情報があるかもしれませんね。

番組の詳細は↓こちらです。

http://www.nhk.or.jp/art/current/music.html#music0605

2009年5月27日 (水)

「ムジカノーヴァ」ヌーブルジェインタビュー

ピアノの教師と学習者のための雑誌「ムジカノーヴァ」6月号に、ヌーブルジェのインタビュー記事が載っています。(取材・文:堀江昭朗氏)

ピアノは遊びで即興的に弾いたのがスタート

まるで、ピアノの森のカイみたいですね。

8歳で習い始めたのは遅かったのかも知れませんが、情熱でカバーです。けれど、そんなこともあってテクニックには自信がありませんでした。

確かに、8歳はピアニストとしては遅いですね。そして、なんと、今ではあれだけ安定的なテクニックをみせるヌーブルジェが、自信がなかったとは!

12歳になってから1曲を丁寧に仕上げることの重要さに気付き、さらにテクニックを磨くためにマニアックなくらいに練習曲を弾きまくりました。

練習曲マニアだったとは!しかし、天才と思っていましたが、相当な努力を積んだのですね。(当たり前か)
CDになっている、ツェルニー50番の練習曲もそのひとつだったようです。

練習曲っぽくならないようにメロディ・ラインに気を配り、バスや和声の動きを丁寧に表現し、曲ごとのキャラクターを際立たせるように工夫しました。練習曲をエレガントに弾くためのこの経験は、他の作品を弾くのにも役だっています。

なるほど。ヌーブルジェの深い解釈の秘密はこのあたりにあるのですね。これはピアノ学習者には大変示唆に富む内容です。
私は恥ずかしながら今ツェルニー30番の練習曲に取り組んでいますが、とかく音楽的にはおざなりになりがちです。ヌーブルジェを見習って、真剣に丁寧に音楽を作っていけば、きっといわゆる「曲」を練習する時に役立ちますね。

さて、今回の来日公演の曲目(バッハ/ブラームス:シャコンヌ、ブラームス:ソナタ、ベートーヴェン:ハンマークラヴィーア)についてです。

《シャコンヌ》は16歳の時にパリ音楽院で賞を取った作品で思い入れもあります。・・・・・・左手の訓練のためにも弾きこんだ作品なんです。

なんと、16歳のときに、あの左手だけのシャコンヌを。
そもそも、この曲も練習曲ですから、やはり練習曲マニアだったんだ。

こ難しく思われているブラームスでも、対位法が使われていたりして知的に構築された《ハンマークラヴィーア》でも、彼らの音楽への情熱にスポットを当てて演奏したいと思っています。音楽について熱っぽく語るブラームスやベートーヴェンの姿をイメージしたい。

6月のリサイタルは、どうやら「熱い」演奏が期待できそうです。
ブラームスの2番のソナタは聴いたことがなかったので、今リヒテル盤で予習中です。でもリヒテルをもってしても、あの曲が素晴らしいとはなかなか思えてきません。たしかに「こ難しい」。ヌーブルジェはどう聴かせてくれるのでしょうか。
ハンマークラヴィーアもある意味「こ難しい」ですし、なんといっても長い。どれだけ集中させてもらえるか、大いに期待したいです。

17歳でパリ音楽院を卒業してすぐデビューしたことについては

早すぎる一本立ちだったのかもしれません。・・・この若さで演奏できる場のあることを感謝しています。・・・・・・僕にとっては音楽活動するのが最も自然なこと。これからも自分のペースで活動できたらと思っています。

日本で言えば、高校2年生くらいで芸術専門の音楽大学を卒業してデビュー、という感じです。
確かに、日本で考えたら無謀に近いですね。
しかも、8歳でピアノを本格的に始めたのですから、わずか9年です。そう考えると、努力も凄かったのだろうとはいえ、やはり天才なのでしょうね。

ぜひ順調にメジャーなピアニストに成長してほしいですが、そうなるとだんだん周りが放っておかないでしょうから、ペースを乱される可能性もあります。
まだ若いのですから、ぜひぜひ、焦らずじっくりと研鑽を積んで、さらに素晴らしい音楽を聴かせてほしいと願ってやみません。

2009年5月26日 (火)

ヌーブルジェ@シャネル・ネクサス・ホール

シャネル銀座の4階にある、シャネル・ネクサス・ホール。

150席のこじんまりしたホールです。

シャネルの創業者であるガブリエル・シャネルが若手芸術家の支援していたことにちなみ、2005年から若手の演奏家のコンサートを催し、なんと無料でそれらを聴けるようです。

2009年については応募して抽選するそうです。

このシリーズの2007年11月に、なんとヌーブルジェのコンサートが開催されていました。

プログラムはベートーヴェンの熱情ソナタや、2007年のサントリーホールで披露したラベルのラ・ヴァルスなどおいしいもので、これを無料で、しかも小さなホールで聴けた人は、何と運の良かったことでしょう。

この日の全プログラムと、当時のヌーブルジェの若々しい写真は以下のサイトで見ることができます。

http://www.chanel-ginza.com/nexushall/2007/jean/

2009年5月25日 (月)

英語翻訳が厳しい(-_-;)

「オーヴェル・シュル・オワーズ音楽祭2005年ライヴ」のCDには、最後にヌーブルジェのインタビューが収録されています。
13分にも及びます。

当然フランス語なので、まったく聞き取れません。
固有名詞さえ、聞き取れません。

ライナー・ノーツにそのインタビューがおこしてありますが、フランス語と英語です。
英語なら何とかなるかと、翻訳ソフトなども使用しつつ、現在翻訳に格闘中です。
しかし、悲しいかな8割方はわかるのですが、細かな表現までは翻訳できません。

わからない2割に重要な意味があったりするといけないので、今の段階でそれを引用してコメントするのは控えています。

これが書けて、やっとアルバムがひとつ終わりです。

どなたか英語に強いヌーブルジェファンの方がいらしたら、手伝っていただきたいところです。

2009年5月22日 (金)

【動画】ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第16番 ト長調 op.31-1

どこかのコンサートかの模様でしょう。

感じ的には17~18歳くらいでしょうか。
演奏はまだ
ちょっとまだ若いですかね。
今のヌーブルジェの片鱗は十分ありますが。

おまけでショパンのエチュードop.25-12が少し入ってます。

2009年5月21日 (木)

そろそろ予習開始

ヌーブルジェのリサイタルまであと1ヶ月に迫ってきました。

ぼちぼち当日の演奏曲の予習を始めました。

以前だったら、それほど事前に準備などしなかったものですが、鑑賞の記事を書き始めてからは、ボーっとただ感覚的に聴いているだけだと、あとから思い出せないので、最近は、できるだけ曲を良く把握してからコンサートに臨むようになりました。

今日は、ベートーヴェンのハンマークラヴィーアソナタを、件のポリーニ若かりし日の演奏で聴いてみました。

やはり、当時のポリーニの演奏は凄かった。
がっちりとした構築性と、音楽の極細部を顕わにする猛烈な技巧。

この演奏を評して「どうだ参ったというような演奏は嫌い」という評論家がいたのを思い出しました。

確かに今聴くと、色気も何もあったものではない演奏だなあと感じますが、レコードが出た当初は私自身も若く、あまり親しみのわかない長い長いソナタであったにも関わらず、びっくり仰天して一気に引き込まれてしまったものです。

ヌーブルジェもテクニシャンですから、第4楽章のフーガも見物だと思いますが、第3楽章をどう歌うか、非常に興味があるところです。

2009年5月20日 (水)

演奏家の種類

ピアニストで文筆家の青柳いづみこさんが、ショパン演奏は5種類の系統に分けられるのではないか、と書いています。

さらに、その系統の中をいくつかに分けています。
そんな単純なものじゃないだろう、と言えなくはないでしょうが、おもしろいので紹介します。

1.繊細・微妙なタッチで勝負する「エレガント派」
 ①元祖エレガント派:ショパン
 ②ピアノ詩人系:コルトー
 ③霊感系:ネイガウス
 ④ノーブル系:リパッティ
 ⑤神童系:キーシン

2.19世紀的な解釈をほどこす「デフォルメ派」
 ①元祖デフォルメ派:リスト
 ②キラキラ派:ローゼンタール
 ③のーびたりちぢんだり系:フリードマン
 ④アルペッジョ系:パデレフスキー
 ⑤かけ値なしにうまい系:ホロヴィッツ
 ⑥おしゃれ系:ルイサダ

3.正確無比なテクニックと客観的な解釈で演奏する「完全無欠派」
 ①ホンバンに弱い系:ゴドフスキ
 ②玄人好み系:ソロモン
 ③むっつり系:バックハウス
 ④絢爛豪華系:ルビンシュタイン
 ⑤書いてある通り弾く系:ホフマン、ポリーニ

4.パワー全開の「ダイナミック派」
 ①デモーニッシュ系:リヒテル
 ②アマテラスオオミカミ系:アルゲリッチ

5.「デフォルメ派」と「完全無欠派」をドッキングさせたような「こだわり派」 
 ①シュール系:ミケランジェリ
 ②超絶技巧系:カツァリス
 ③瞑想系:ツィマーマン
 ④キッカイ系:ポゴレリッチ
 ⑤おどろ系:グールド

(ネタ元は↓こちら)
https://app.f.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?blog_id=1147850

さて、ヌーブルジェはどこに入りましょうか?
エレガント派と完全無欠派とダイナミック派を足して3で割ったくらいでしょうか?

また、コミックの「ピアノの森」で、主人公カイの先生である阿字野が「ピアニストには2種類ある」として
    「もう1度聴きたいが、そうでないかだ」
と語ったとあります。

確かに、いろいろご託を並べたところで、結局はそれしかないのではないかと、フト思いました。

もちろん、ジャン=フレデリック・ヌーブルジェは私にとって「もう1度聴きたいピアニスト」であることは間違いありません。

2009年5月19日 (火)

オーヴェル・シュル・オワーズ音楽祭2005年ライヴ【CD聴記10】

【9曲目@CD2】
ラヴェル:メヌエット(「クープランの墓」より)

だいぶ中断してしまったCD聴記の続きです。
なぜ中断してしまったかというと、何せ守備範囲が狭いので、ラヴェルの曲についてのコメントをどうして良
いか悩んでいたからです。

ヌーブルジェは、たぶんご当地フランスものを弾かせても抜群にうまいはず。
でも、あえてフランスものをプログラムの中心に据えるのは避けているような気がします。
もっとも海外のコンサートプログラムまでチェックしているわけではないので、見えている範囲の推測にすぎ
ませんが。

アンコールでは、このCDでもそうですし、先日の大阪フィルとのコンチェルトの後でドビュッシーを弾きましたし、ラ・フォル・ジュルネではフォーレを弾きました。
やはり、実はたくさんレパートリーを持っているに違いありません。

で、この曲ですが、コメントできるほど知りません。
でもこの演奏を聴いて「ラベルも悪くない」と思いました。
”のだめ”の弾く「鏡」を聴いてラベルに目覚める元貴族と同じ感じですね。
ちゃっかりしたもんです。

端正なメヌエット。
詩情と激情。
古典的な旋律に近代の響き。
とても素敵だと思いました。

さっそく、パスカル・ロジェのラベル集を買ってしまいました。

2009年5月18日 (月)

ヤノシュ・オレイニチャク リサイタル@みなとみらいホール

ボランスキー監督の映画「戦場のピアニスト」のピアノ演奏と演奏シーンに出演したというポーランド人のオレイニチャク。
テーマ音楽となった嬰ハ短調の遺作のノクターン(レント・コン・エスプレシオーネ)は大変印象的でした。

地元のホールということもあって、初めてライブを聴いてきました。5/17(日)のマチネーです。

プログラムは以下のとおりオールショパンプログラムでした。

【前半】
ノクターン選集(7曲)
 ハ短調(遺作)
 嬰ハ短調(遺作)
 第4番ヘ長調Op.15-1
 第5番嬰ヘ長調Op.15-2
 第13番ハ短調Op.48-1
 第17番ロ長調Op.62-1
 第19番ホ短調Op.72-1

【後半】
ワルツ選集(9曲)
 第3番イ短調Op.34-2「華麗なる円舞曲」
 第6番変ニ長調Op.64-1「子犬のワルツ」
 第7番嬰ハ短調Op.64-2
 第8番変イ長調Op.64-3
 第9番変イ長調Op.69-1「別れのワルツ」
 第10番ロ短調Op.69-2
 ホ短調(遺作)
 イ短調(遺作)
 第12番ヘ短調Op.70-2
※演奏順は違いました。

【アンコール】
スケルツォ第2番
シューマン:幻想小曲集より「飛翔」

映画での演奏は、「演歌」系の印象でした。
けっこうベタな感じかなと思っていたのですが、案外ナイーブな音の作り。

嬰ハ短調は映画とはだいぶ異なる弾き方をしていましたね。あまり激情しない。
実は映画の演歌的嬰ハ短調を期待していたので、少し拍子抜けではありました。
ルバートは結構していたものの、ベタベタというほどではなく。
遺作のワルツが、あまり聴いた覚えがなく、その分新鮮で印象に残りました。

ほとんど楽譜を見ていましたが、一部暗譜で弾いていたものもあり、あとアンコールは暗譜です。暗譜で弾いている曲の方が、闊達でノっているように聞こえました。

アンコールの2曲は、ノクターン、ワルツとは明らかにタッチを変えてきて、ガンガンとピアノを響かせていました。むしろこちら系の方が本質の人なのでしょうか?
ただ、技術的には若干厳しいものがあった気がします。

ハ短調のノクターンと、4番、19番のノクターンがヌーブルジェのCDにあります。
ヌーブルジェがいかにインテンポで構成感を大事に弾いているのかが良くわかります。
もちろん、だからといって詩情が足らないわけではなく、ほのかなフッと見せる詩情がなんともたまりません

モダンな演奏と言えましょう。

これに対して、この日のオレイニチャクは、友人の言葉を借りれば「アンティークな演奏」という表現が似合いそうです。

2009年5月17日 (日)

【動画】リスト:タランテラ

2004年のホセ・イトゥルビ国際ピアノコンクールの映像です。
ヌーブルジェ17歳くらいのはず。

キレキレです。
ピアノはカワイでしょうか?

アンドレイ・コロベイニコフ リサイタル@王子ホール

また一人、気に留めるべき若手のピアニストが増えました。

ラ・フォル・ジュルネでのバッハの演奏にびっくりして、急遽リサイタルを聴いてみることにしたアンドレイ・コロベイニコフです。

5/14、この日のプログラムは以下のとおり。

【前半】
1.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 op.78「テレーゼ」
2.ベートーヴェン:アンダンテ・ファヴォリ ヘ長調 WoO.57
3.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 op.57「熱情」

【後半】
4.ショスタコーヴィチ:24の前奏曲 op.34
5.シュスタコーヴィチ:前奏曲とフーガ op.87より 第24番 ニ短調

【アンコール】
シチェドリン : ロシアの鐘
J.S.バッハ(ケンプ編) : フルート・ソナタ第2番 変ホ長調 BWV1031から シチリアーノ
ベートーヴェン : バガテル op.126-4

バッハのときはグールドばりのノンレガート奏法が新鮮でした。この日真横から見た演奏姿勢は現代のピアニストにしては椅子が低く、肘の位置が鍵盤より下がっていて、こちらもグールドに近いものがあります。そういえば、演奏しながらハミングするところも似ています。

しかし、テレーゼソナタから始まったベートーウ゛ェンの演奏は至極常識的なものでした。
もちろん、今回は左右のペダルを使い分け、音色の変化やディナーミクの変化に心を配っていました。
テレーゼとアンダンテ・ファボリは、きらきらきらめくタッチというより、やや抑え気味でした。といっても、テクニカルな部分では切れよく処理しており、安心して聴いていられました。

この日のメインというべき熱情ソナタは、冒頭の「運命の動機」が、非常にゆっくりとしたテンポで鳴らされたので、どういう展開になるのか緊張しました。その後は、普通のテンポで、奇をてらうことなく、聞こえるべき旋律がきちんと聞こえる真っ当な演奏でした。
ディナーミクの変化も申し分なく、混濁することのない低音部の迫力も相当なもの。コーダに入る前、ためにためて、コーダはも猛烈スピードで盛り上げます。
コロベイニコフは、バッハのパルティータでもそうでしたが、終結部のクライマックスを相当重視しているようです。人によっては、やり過ぎと思う方もいるやもしれません。

第2楽章は、確かめるようなスローなテンポ。変奏が進んでも、細やかなパッセージが現れても決して慌てません。たぶん、第3楽章の爆発に備えた”ため”を十分蓄えたいのでしょう。

第3楽章は2楽章の緊張から解き放たれとはいえ、最初から猛爆するということはなく、やはり常識的に進んでいきます。
びっくりしたのはコーダです。弱音での和音の連打は、今まで聴いたどの演奏よりも早い!
こんなスピードで最後まで弾ききることができるのだろうか?
若干危ない感じはしましたが、何とかぎりぎり最後は駆け抜けました。
やはり、こうやって終わりたい人のようです。

全体として、聴きごたえのあるベートーヴェンを聴けたと思います。

さて、後半のシュスタコーヴィッチは初めて聴く曲で、もともと守備範囲の狭い人間ですので、なかなかこういった、旋律のはっきりしない曲を聴くのは厳しいものがありました。
オッ、やっとメロディーが、と思う間もなく、不協和音に回帰。
やはりショパンの24の前奏曲の方が良いですなあ。

非常に技巧的な曲で、これらをあっさり弾いていたコロベイニコフのテクニックが優れていることはよくわかりました。

終曲の前奏曲とフーガは、多少親しみがもてました。でもフーガの最後はフーガなのだろうか?右手と左手に交互に旋律が現れるだけで、バッハのように多旋律がからんでいるようには思えず。
この曲も最後は盛り上がりで、コロベイニコフらしい終わり方だったのかもしれません。

実は、この日楽しかったのはアンコールでした。
1曲目の「ロシアの鐘」はコロベイニコフが日本語で紹介してくれました。
曲名のとおり、大音量の鐘の音がホール全体に響き渡りました。王子ホールは案外音響はデッドで、小さなホールなのにガンガンピアノが響いてくるという感じではありませんでした。
ところが、この曲に関しては、響きがホールに充満し、ちょっとした陶酔感を味わえました。
やはり、ピアノの鳴らし方によって、こんなにも響き方が違うものなのだと、感心したしだいです。

2曲目の「シチリアーノ」。たぶん、バッハを演るだろうな、と予想していたので当たりです。しかも、よく知っている曲だったので嬉しくなりました。この演奏は少し変わっていて、左手の伴奏をペダルでレガートに響かせないで、ノンレガートというより、スタカート気味にポツポツ弾くのです。ちょっと違和感があったものの、曲が進むにつれ、なんとも憂いがあって、寂しげなこの曲には、案外あのような弾き方があっているのかも、と納得しました。

3曲目の「バガテル」。もちろん最後は盛り上げでしたね。激-緩-激のわかりやすい構造。ベートヴェンというより、ロシアものでも弾いている印象でしたが、非常に楽しい演奏でした。あまり聴いたことがなかったので、これから聴きこんでみようという気になりました。
ライブで感銘を受けて、聴く曲のレパートリーが増えていくというのは、楽しいものです。

というわけで、ヌーブルジェと同い年のこのロシア人の青年も、なかなか将来楽しみな逸材ということがわかりました。
記事は前後しましたが、枯れ行くポリーニらの老巨匠たちに替わって、最近は、このように伸び行く若手のピアニストが輩出し、クラッシクピアノ界もなかなか楽しくなってきました。

2009年5月16日 (土)

マウリツィオ・ポリーニ リサイタル@サントリーホール

【注意】(以下の記事はポリーニのリサイタルを聴いた、その日の正直な感想で、かつて大ファンだった者として、一抹の寂しさを抱えてのものです。長年クラシックピアノ界を牽引してきた巨匠に対して、大変失礼な言い回しとなってしまいましたが、決してポリーニの偉大なる事績をおとしめようとする意図はありません。2010年8月)

かつて、ロシアの巨匠ウラディーミル・ホロヴィッツが、長年日本人ファンが待望した初来日を果たした際の、NHKホールにおけるリサイタルについて「ひびの入った骨董」という名セリフを残したのは、音楽評論家の吉田秀和でした。

マウリツィオ・ポリーニは、ショパンコンクールの優勝後10年の研鑽期間を経て再デビューした1970年代においては、その圧倒的なテクニックとギリシア彫刻のような造形美、ラテンの太陽のようなまばゆいばかりの音色で聴く者を圧倒しました。
私もそのうちの一人で、不滅の名盤の誉れ高きショパンエチュード全集は、すり切れるくらい(当時はLPでしたから)聴いたものです。

今日サントリーホールで24年ぶりにライブで聴いたポリーニは、さしずめ「角が欠けたギリシア彫刻」とでもいうようでしたしょうか。

オールショパンプログラムでした。

【前半】
前奏曲 嬰ハ短調 op.45
バラード第2番 ヘ長調 op.38
夜想曲 嬰ハ短調 op.27-1
夜想曲 変ニ長調 op.27-2
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.35

【後半】
スケルツォ第1番 ロ短調 op.20
4つのマズルカ op.33
子守歌 op.57
ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53 「英雄」

【アンコール】
練習曲ハ短調 op.10-12「革命」
バラード1番ト短調 op.23
練習曲嬰ハ短調 op.10-4
前奏曲変二長調 op.28-15「雨だれ」
スケルツォ第3番嬰ハ短調 op.39

アンコールはへビーな5曲でしたので、3部構成といった方が良いでしょう。

1曲目はまだ耳が慣れず、曲もおとなしめですから挨拶がわりです。
バラード2番は、ヌーブルジェのサントリーホールライブCDと聴き比べです。
ポリーニの音は、なんだか芯がなくなってしまい、響きが団子のようになって宙を舞います。
全体的にグシャッとしています。
決めるべき右手の高音部のアタックが弱く、格好よくありません。
またディナーミクの変化も平板。
若きヌーブルジェの圧勝ではないでしょうか

夜想曲2曲も緊張感に欠けます。

前半のメイン、ソナタ2番。出だしがまず弱い。悲壮感漂うはずの第1主題の切れ味がない。
そして、昔のポリーニだったらありえないような、ミスタッチ。
第2楽章も危なっかしい。
葬送行進曲はまあまあとしても、やはり緊張感が今ひとつでしょうか。
第4楽章。響きに埋もれて、何も聞こえない。浮かび上がってくるはずのかすかな旋律が浮いてこない。

後半1曲目スケルツォ1番。
いきなり、危ない場面。
スケルツォなのに、諧謔的なノリがない。
相変わらず響かせすぎのお団子音響。

今日のリサイタルで全体的に言えたのは、ダンパーペダルを踏みすぎで、音が響きすぎてしまうのです。これは昔からあった傾向です。ただ、昔はタッチの粒立ちが明瞭だったのでそれでも聴けました。
しかし、今回はタッチ自体が弱々しくなってしまい、響きの中に埋もれてしまい、おまけに時折にごったりするものですから、とても不安定でカシッとしない音楽になってしまっていました。

マズルカは逆に今のポリーニには合うのかと少し期待をしましたが、3拍子の取り方がグシャっとしていて、やはりイマイチ。とくに有名な2曲目は左右のバランスが悪く、左手のリズムが響き過ぎて気持ちが良くありません。

子守唄は、さすがにテクニカルに緊張するところはなく、無難に弾いたと思いますが、昨秋ル・ジュルナル・ド・ショパンでアンヌ・ケフェレックが弾いた、実に美しくも艶やかな子守唄とは比べるべくもなく。

英雄ポロネーズは、ヌーブルジェのライブの怒濤の演奏が耳に残っています。
ポリーニが若い頃録音したポロネーズ集の英雄はそれはダイナミックなものでした。
この日の英雄はエッジがなくなり丸くなり、音の焦点がぼけているようです。弾けてはいるのですが、メリハリが弱く、ズルズルと音楽が間延びしている感じ。
中間過ぎの旋律的な部分は、ヌーブルジェは勇壮な部分との対比も鮮やかに非常にセンシティブに弾いたものですが、ポリーニは音が強すぎ、安らぎ感がありません。
英雄ポロネーズもヌーブルジェに軍配です。

しかし、日本人は優しいので、英雄ポロネーズが終わると怒濤のような拍手で老巨匠をたたえます。
そして、老巨匠は昔ながらのサービス精神で、5曲も、しかもエチュード、バラード、スケルツォと大盤振る舞いのアンコール曲を披露してくれました。

はっきり言って、バラード1番あたり(これも技術的にだいぶ危なかった)で「巨匠よ、ありがとう」と拍手を止めてほしかった。
ところが会場はますます白熱して、アンコールが進むごとにスタンディングが増え、おねだりです。
どうかと思いますねえ。

エチュードは昔の演奏が耳に焼き付いていますので、確かに面影はある。でも全く切れ味が違う。10-4など本当に聴くたびにひっくりかえるようでしたから。

最後のスケルツォ3番は、昔聴いたライブでもアンコールで弾いてくれた得意曲だと思いますが、今日はアンコール5曲目ということもあり、集中力もとぎれがちで、技術的にもうフラフラでした。
あんなにミスするポリーニは、元ファンとしては見ていられませんでした。

とにかく、今日はたくさんサービスしていただき、ありがとうございましたというしかありません。
(何でも、リサイタルの後サイン会を行い、長蛇の列ができたのとのこと。本当にご苦労さまです)

かつてスビャストラフ・リヒテルは、晩年になるとテクニックは衰えたものの、ピュアな音質は維持したまま、実に奥深い心に響く演奏をして、それらの記録がたくさんCDに残っています。

ポリーニもまだ年齢的に引退するような歳ではないでしょうから、何とかこれから達成できる境地というのをつきつめてもらいたいものです。
ショパンのテクニカルな曲は、もう弾かなくても良いのではないでしょうか。

(ポリーニファンの方、もし読んでしまったらごめんなさい)

2009年5月14日 (木)

アンドレイ・コレベイニコフ リサイタル@王子ホール(速報)

アンコールのシチェドリン「ロシアの鐘」がインパクトありすぎ。

本プロがふっとんでしまいました。

「熱情」は真っ当な演奏。ただし、第3楽章コーダは早すぎて危うかった。

シュスタコは曲として受け入れるのが私には厳しい・・・

とりあえず速報です。

2009年5月13日 (水)

金沢でのヌーブルジェの画像情報

もはやトレードマークともいうべき黒のジャケットと、この日は濃いピンク色のシャツで熱演しました。

5/2の金沢でのヌーブルジェが演奏する姿と演奏後のリラックスした姿の写真が、公式サイトに載っていました。

http://lfjk.jp/blog/diarypro/diary.cgi?no=54

グールドの呪縛からの解放

グレン・グールドのピアノ演奏には魔力があります。
その魔力に多くの人が魅せられ、取り憑かれてしまう。

私はバッハは食わず嫌いであったため、長らくグールド熱に冒されることはありませんでした。
しかし、約3年ほど前、たまたまグールドの「未完のイタリアン・アルバム」を聴いたところからはまってし
まいました。

そのアルバムには、J.S.バッハの曲ばかりでなく、バッハが編曲したものや、スカルラッティの曲なども含まれています。比較的短く旋律的でわかりやすい曲が多かったせいもありましょう、グールドの生気にあふれた溌剌とした演奏におおいに刺激を受け、その世界に一挙に引き込まれてしまいました。
以来、グールドのバッハを聴きあさりました。

グールドでバッハに目覚めたため、グールド以外でも、マルタ・アルゲリッチ、アンドラーシュ・シフ、スタニスラフ・ブーニン、スビャストラフ・リヒテル等々を聴いてみました。
わがヌーブルジェには、サントリーホールライブでのイギリス組曲の第2番の演奏があります。

しかし、グールドの、あの現代の完成されたピアノの特性をあえて無視するような、エキセントリックでインパクトのある表現に親しんでしまうと、CDで聴くかぎり他のピアニストの演奏が物足りなく感じてしまったものでした。
まさに、魔力に取り憑かれてしまったようです。

今回、ラ・フォル・ジュルネでバッハをライブで一挙に聴くという貴重な体験をしました。
しかも、一流のピアニストたちによる、現代のフルコンサートピアノを使用しての、モダンな演奏です。

ヌーブルジェは確固たる構築性を維持し、深いタッチによる緊張感とほのかな詩情をたたえたバッハを聴かせてくれました。
ケフェレックは叙情性溢れる洗練された演奏、そしてコロベイニコフはソフトグールドとでもいうような歯切
れの良い演奏でした。

バッハには、まだまだいろいろな素晴らしい演奏の可能性があるのだ、ということを体験することができました。

ようやく、グレン・グールドの呪縛から解き放たれたようです。

2009年5月12日 (火)

ラ・フォル・ジュルネ2009~仲道郁代、ベレゾフスキー

今回のラ・フォル・ジュルネでは、ピアニストではヌーブルジェをストライクゾーンとして、ケフェレック、コロベイニコフがお目当てで、あと空いた時間に、金沢で仲道郁代さんを、東京でボリス・ベレゾフスキーを聴きました。

仲道郁代さんはモーツァルトのソナタの1番から3番を聴きました。
1番はヌーブルジェとかぶりました。

ピアノとフォルテの入れ替わりに神経をくばった丁寧な演奏だったと思います。丁寧すぎて、少し流れが停滞するようなところはあった気がします。

ヌーブルジェやケフェレックと聴きくらべて感じたのは、音の繊細さの差です。ヌーブルジェ、ケフェレックにはおよそ無造作に聞こえる音がありません。どんなフォルテであっても、音が割れたりにごったりしない。
これは昨年のル・ジュルナル・ド・ショパンでもヨーロッパのピアニストに感じたことです。

ボリス・ベレゾフスキーはバッハのゴールドベルク変奏曲を聴きました。

チャイコフスキーコンクールの覇者だけあって、バッハというより、チャイコフスキーかラフマニノフでも聴いているような感じでした。
たぶん、普段はレパートリーにはないのではないでしょうか。
楽譜も見ながらの演奏でしたし。
あえて、自分の得意な表現方法で、ゴールドベルクに挑戦したのではないかと想像しています。

特に、29番目、30番目の変奏あたりになると、なりふり構わないというか、完全にバッハを逸脱して、奔放に弾いていました。

私の趣味からすると、ちょっとどうかなというところでした。

それにしても、今回バッハの曲を4人のピアニストの演奏で聴いてみて、いかに、バッハは表現に多様性があるのかと感じ入りました。

2009年5月11日 (月)

「ぶらあぼ」ヌーブルジェインタビュー

フリーのクラッシック音楽情報誌「ぶらあぼ」5月号に、ヌーブルジェのインタビュー記事が載っていました

新たな情報もあったので、引用しつつ紹介します。

オルガンを知ることで、ピアノを弾く際に役にたつことがたくさんあります。

パリ音楽院でオルガンも弾いたようです。

でも僕はあくまでもバッハをピアノで弾いていきたい

ぜひ、そうしてください。

今度のサントリーホールでのリサイタルの曲目でドイツ3Bを選んだことについては

フランス音楽も大切なレパートリーですが、それに偏らないように意識的にドイツ系の作曲家でプログラムを組んでみました。

なるほど、やはりフランス人だからフランスもの、とレッテルを貼られるのを慎重に避けているようですね。

子供の頃から作曲に興味があり、書いた曲はたくさんあります。

才能豊かなんですなあ

僕は各国のいろいろな場所で出会う”初対面”のピアノを弾くのがとても楽しみなんです。

おっと、自分のピアノを持ち歩くツィメルマンとはどうやら方向性が違うようです。

音楽には好奇心、エスプリがとても大切だと思っています。ですから、僕のピアノを聴くときには、ワクワクしながら好奇心をもって聴いてほしいですね。

エスプリですか。さすがこの辺はフランス人です。

今回のリサイタルで、多彩なピアノ音楽の楽しみを提供できればと思っています。

レパートリーの広さはこのあたりの考えによるのですね。
多彩な音色を弾きわけるのも、これで納得がいきます。

インタビュアーによると、ヌーブルジェは議論好きのフランス人らしく、饒舌で知的だったそうです。

ラ・フォル・ジュルネ東京2009~コロベイニコフコンサート

東京では、5/5にルネ・マルタン氏が非常に高くかっているという、アンドレイ・コロベイニコフの演奏も聴いてみました。
1986年ロシア生まれ。ヌーブルジェと奇しくも同い年です。

ほとんど予備知識なしでのぞみました。
プログラムは

1.J.S.バッハ:パルティータ第5番 ト長調 BWV829
2.J.S.バッハ:パルティータ第6番 ホ短調 BWV830

名曲です。

コロベイニコフの演奏でまず印象的だったのは、ペダルをほとんど使用せず、キレの良いノンレガート主体の弾き方だったことです。
ノンレガートと言っても、グールドのように乾いた音ではなく、もう少しウェットで、もちろん雑な音色は奏
でません。大変よくコントロールされたテクニックでした。
スピードがあって、レンジが広く、終止の盛り上げ方などがはっきりしているので、メリハリがあり、聴き応
えがありました。

バッハのこの手の組曲は、楽譜を見ると、前半でリピート、後半にもリピートがあり、大抵のピアニストは指示通り前2回、後2回弾きます。グールドだけは別で、ほとんどリピートしません。リピートしたとしても前半だけだったりします。

私の趣味的には、せめてリピートは前半だけにしてもらいたいところです。
後半も同じ弾き方で2回弾かれては、どうも音楽がくどくていけません。

で、コロベイニコフも例に漏れず、きっちり前後半リピートをしました。
ところが、今回にかぎっては、後半いったん盛り上げて終止し、間髪いれずにもう一度リピートしても、なぜ
かもう一度聴きたくて、リピートがくどく感じませんでした。

それだけ、コロベイニコフの演奏に引き込まれてしまったようです。
6番のジグはとても印象深くて、今でもまだ耳に残っています。

後で知ったことですが、どちらかというと叙情的な曲や、ロシア物を得意としているようですね。
今週の木曜日にリサイタルでベートーヴェンを弾くので、急遽聴いてみることにしました。

コロベイニコフはこの日夕方のミュージックキオスクにも出演し、

J.S.バッハ/ブゾーニ
目覚めよと呼ぶ声が聞こえ BWV645


J.S.バッハ/ブゾーニ
シャコンヌ BW1004ー5

を弾きました。
前日、ヌーブルジェのブラームス編曲のシャコンヌを聴いたばかりで、この日はブゾーニ編曲のシャコンヌを
聴けました。
演奏は勇壮で情緒溢れるものでした。

若くて個性的なピアニストが最近増えてきているようで、とても喜ばしいことです。

2009年5月10日 (日)

ラ・フォル・ジュルネ東京2009~アンヌ・ケフェレックコンサート

東京でもケフェレックをひとつ聴きました。
5/4の夜のNO.257です。

1.J.S.バッハ/ブゾーニ:コラール前奏曲「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」BWV639
2.J.S.バッハ:カプリッチョ 変ロ長調 「最愛の兄の旅立ちにあたって」BWV992よりアダージ
ッシシモ
3.J.S.バッハ:前奏曲 第4番 嬰ハ短調 BWV849(平均律クラヴィーア曲集 第1巻より)
4.J.S.バッハ:前奏曲 第22番 変ロ短調 BWV867(平均律クラヴィーア曲集 第1巻より)
5.J.S.バッハ/コーエン:カンタータ「イエスは十二使徒をひき寄せたまえり」BWV22よりコ
ラール
6.J.S.バッハ:前奏曲 第8番 変ホ短調 BWV853(平均律クラヴィーア曲集 第1巻より)
7.J.S.バッハ/ブゾーニ:トッカータ、アダージョ ハ長調 BWV564
8.J.S.バッハ:パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826
9.J.S.バッハ/ブゾーニ:コラール前奏曲「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV659

「瞑想(メディテーション)」がテーマの選曲です。
演奏が始まる前に、ケフェレックから数分のスピーチがありました。

~この日の演奏は、7曲目までがゆったりした曲で、8曲目にアグレッシブな曲がはさまるけれども、最後にまたゆったりした曲で終わる。瞑想(メディテーション)をテーマにしたものである。日本には禅とか能の文化があるので、このような世界はよく理解していただけるだろう。ついては、全曲を続けて演奏したいので、協力をお願いしたい~

つまり、曲の途中での拍手はしないでください、とのことでした。
このあと椅子の高さが低すぎて、調整に手間取り「スミマセン」。笑いがおこって少し和んだ
ところで演奏が始まりました。

この前のコンサートでヌーブルジェの尋常ならざる音楽を聴いたばかりだったので、この選曲はとてもありがたいと思っていました。寝る前に少し安らげそうだと。
確かに6曲目までは、まさに瞑想的にゆったりと時が流れていきました。

ところが、パルティータの2番が始まり、出だしのシンフォニアは瞑想の雰囲気を受けて始まり、ロンドまでは概ねその雰囲気を保ったものの、最後のカプリッチョはなんと、アルゲリッチなみの爆発的な演奏だったのです。息を飲むような激しさでした。
ここでもきめかたに独特の節回しがあったのですが、いやらしくないところがさすがです。
しかし、ここで一気に目覚まし時計を鳴らされたようです。

最後はまた瞑想に戻り終演しました。終わってからもしばらくしびれていました。

プログラムに「ケフェレックが誘う安らぎに満ちた世界」とあります。
しかし、「安らぎと激情に満ちた世界」でありました。

ラ・フォル・ジュルネ金沢2009~アンヌ・ケフェレックコンサート

金沢にはヌーブルジェのチケットだけ前売りで用意し、あとは市内観光でもしているつもりでした。ところが、金沢では東京と違って当日券が余裕で残っていました。
しかも、ほとんどが1,500円です。
というわけで、観光もそこそこに、ついつい気になるコンサートを聴いてしまいました。

昨年のル・ジュルナル・ド・ショパン以来、やはりお気に入りのアンヌ・ケフェレックは、5/2の125と5/3の231を聴きました。

125のプログラム

1.デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 ニ長調 K.573
2.幻想曲 ハ短調 K.475
3.ピアノ・ソナタ第14番 K.457

231のプログラム

1.ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330
2.ピアノと管楽器のための五重奏曲 変ホ長調 K.452
(管楽器:シンフォニア・ヴァルソヴィア・ソロイスツ)

今回のケフェレックは、昨年のオペラシティホールで感じたように、艶があって洗練されていて、とても良かったです。

K.475とK.457は3月に浜離宮ホールで聴いたばかりです。
この時は、記事にも書いたように、今ひとつ音が前に出てきていなかったものです。
今回はそんなことはなく、よくピアノは鳴っていて、迫力がありました。

K.330はチャーミングな曲ですから、ケフェレックにお似合いだろうなと思っていましたところ、まさにその通りで、大変楽しい演奏でした。ケフェレックは、独特の洒落たパッセージの弾き方を時折みせます。それはやりすぎると端正さをかいて危ないと思うのですが、K.330については、ほどよく色艶を与えていたと思います。
趣味がいいのですね。

ピアノの管楽器のための五重奏曲は、モーツァルトがピアノ協奏曲でよく見せる、ピアノと管楽器との掛け合いの部分だけを抜き出したような、大変美しい楽曲で、私の大好きな曲です。
生で聴くのは初めてでした。
CDで聴くのと違って、ダイレクトな感じはないものの、柔らかいアコーティスックな音と、
合奏の息づかいがわかって、心が安らぎました。
そして、何と言ってもこの曲の聴かせどころといえる、第2楽章の管楽器がソロで美しいメロ
ディーを順に奏でる部分をうっとり聴けて、大変満足でした。

もともとピアノソロ以外はほとんど聴かない人間なのですが、生を聴くとまんざらでもありません。特に今回は古典的な様式を理解する上で、管楽器や弦楽器を聴けたことは大変勉強になりました。

2009年5月 8日 (金)

ラ・フォル・ジュルネ東京2009~No.277ヌーブルジェコンサート

いよいよラ・フォル・ジュルネ2009における、ヌーブルジェ最後の演奏会です。
19:15からG409「ドレスデン」にて開演しました。
「ドレスデン」はおそらく会議室をホールにしたてたもので、わずか153席しかありません。

ピアノのまわりにコの字型に椅子が並べてありました。
私の席は真ん中後方でした。
後方といっても、5列目くらいです。

照明が落ちると、たいへん暗く、本当にピアノだけにスポットがあたっていて、何とも秘めやかな雰囲気でした。
プログラムはすべて編曲もので以下のとおり。

1.ブクステフーデ/プロコフィエフ:前奏曲とフーガ ニ短調 BuxWV140
2.J.S. バッハ/ブゾーニ:コラール前奏曲「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV659
3.J.S. バッハ/ブゾーニ:コラール前奏曲「今ぞ喜べ、愛するキリスト者の仲間たちよ」BWV734
4.J.S. バッハ/ブラームス:「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004」よりシャコンヌ
5.J.S. バッハ/フェインベルク:「トリオ・ソナタ第5番BWV529」よりラルゴ イ短調
6.J.S. バッハ/ヌーブルジェ:「ミサ曲 ロ短調 BWV232」よりキリエ・エレイソン
アンコール J.S.バッハ/ブゾーニ:コラール前奏曲「目覚めよ、と呼ぶ声あり」BWV645

これらはほとんど知りませんでした。
シャコンヌだけは事前にチェックしておきましたが、あとは出たとこ勝負です。

終わってみて、今思い出しながら記事を書いていますが、正直言って、シャコンヌ以外はあまり思い出せません。
一つは、聞き慣れていない曲ばかりだったことと、もう一つはシャコンヌがあまりにも凄まじくて集中して聴いたためか、他の曲の記憶が吹っ飛んでしまったのかもしれません。

しかたなく、ラ・フォル・ジュルネの公式サイトの視聴コーナーで復習しながら、何とか思い出して書いてみます。

ブクステフーデ/プロコフィエフは、そうそうフーガでした。バッハに影響を与えたというのがブクスフーデらしいですね。編曲ものですが、古典的な均整を崩さないフーガだったと思います。

BWV659はゆったりとした寂しいコラール。視聴して記憶が蘇ってきました。ほのかな詩情はヌーブルジェの得意とするところで、またその美音でうっとりでした。

BWV734は昼間のフリーコンサートと同じ曲でしたね。ところが、どうもこの夜の演奏がよく思いだせません。昼間の演奏はよく覚えているのに。やはりこのあとのシャコンヌで跳んでしまったのでしょうか。

そして、いよいよブラームス版のシャコンヌです。6月のリサイタルのプログラムでもあります。一般的にはブゾーニ版が有名で良く弾かれます。ブラームスのものは、左手だけで弾かれます。そもそもが練習曲といういうことで、超絶的な技巧が要求されるようです。
当たり前ですが、右手をだらんとしたまま、厳かにシャコンヌが始まります。
なんだか尋常でない緊張感が漂っています。左手だけのパーフォーマンスということもあって、背伸びして見入ってしまいました。
音楽がすすむにつれ、いつも冷静なヌーブルジェが、どうも興奮してきているような感じがします。緊張の度合いがますます高まり、聴衆も息をひそめて聴き入っています。
音楽はだんだん盛り上がり、もはや左手だけで弾いていることが信じられないような響きが、暗い会場のなかに充満します。
緊張感と陶酔感で、くらくらしそうでした。
これは大変なものを聴いてしまいました。
6月は大きなホールで、また違った感興が得られることでしょう。

J.S. バッハ/フェインベルクのラルゴは、視聴して思い出しました。
何とも寂しげな旋律が印象的でした。
強烈なシャコンヌの後の一服といったところですが、どうしてなかなかこれも緊張感が続いていた気がします。

最後はヌーブルジェ自身がミサ曲ロ短調のメロディーを編曲したものだそうです。
またまた、緊張をはらんだ爆発的な演奏でした。もうシャコンヌで疲れ切ってしまったので、勘弁してください、と言いたいところでした。

例によってアンコールのサービスです。
どうか、またフォーレとか、ドビュッシーあたりをお願いしたいところです。
耳を休ませてください。

弾かれた曲はコラール前奏曲のBWV645だったそうです。初めてでしたので、バッハとはわからず、わからないほど、ほっとした曲でした。
良かった良かった。癒されました。

いやいや、このコンサートでこの日5つめだったこともあり、ヌーブルジェの緊張感あふれる演奏もあって、相当ダメージを受けました。
実は、この後、アンヌ・ケフェレックのコンサートを聴いたのですが、これがまた凄かった。

くたくたの1日となりました。

2009年5月 7日 (木)

ラ・フォル・ジュルネ東京2009~ミュージックキオスク:ヌーブルジェフリーコンサート

東京では地上広場(ブランデンブルグ広場)でフリーのコンサートが企画されていました。
5月4日の11:40~12:00は、なんと、ヌーブルジェが出演することが当日朝わかりました。

運良く、その時間帯には有料コンサートを取っていなかったので、迷わず聴きにいきました。
広場に特設ステージが設置され、椅子もある程度おいてありましたが、無料であるせいか、か
なり前から椅子席はいっぱい。しかたなく立ち見です。

野外だけに、PAを使用しています。マイクはピアノの中に向けて2本じかづけという感じでセットされていました。

ヌーブルジェは、例によってぎこちなく登場して日本語で挨拶。
演奏曲目を英語で紹介しました。

最初の曲はバッハ/ブゾーニのコラール前奏曲「今ぞ喜べ、愛するキリストの信者たちよ」BWV734す。
右手がコロコロコロと猛烈なスピードでめまぐるしく動き回る小曲でした。
ほんの挨拶がわりといったところでしょうか。でも十分インパクトがありました。
マイクでダイレクトにピアノの音を拾っているので、何だかCDを聴いているような感じがしたものです

2曲目はなんと、バッハ:イタリア協奏曲です。
金沢でのアンコールの意味がここで判明しました。
今日は全部弾くのだろうか?と期待しつつ、耳を傾けました。
まずは第1楽章です。金沢では演奏しなかったので、嬉しいことこの上ありません。
見事なものでした。快適なテンポと構成力のある勇壮な表現。これがフリーとは、申し訳ない
ようです。
曲が終わりに近づき、やや不安を覚えます。堂々とした終結だけに、もしかして、拍手が起こ
る?
そして、不安的中です。

ところが、ここでヌーブルジェは諦めたのか、予定のことだったのか、第2楽章をとばして、第3楽章を弾き始めます。
野外で少しは興奮するのかと思いきや、全くそういうことはなく、金沢で聴いたの同じく、突
っ走らずに、しっかりリズムを刻んでかっちりと弾ききりました。

ここで終わるのかと思ったら、客席になぜかジャズピアニストの小曽根真がいて、ヌーブルジェがステージに呼び込みました。そして、なんと2人で即興連弾が始まってしまいました。
まずはヌーブルジェがバスでリズムを刻み、小曽根がヌーブルジェの顔を見ながら一生懸命合わせます。途中から位置を入
れ替わり、今度は小曽根のバスにのせて、ヌーブルジェが華やかに即興を繰り広げました。
いや、びっくりびっくり。

ヌーブルジェは作曲もするし、多才であることは少し情報を得ていましたが、ここまでできるとは!
後で知ったことですが、南フランスのラ・ロック・ダンテロンのピアノフェスティバルで、小曽根とヌーブルジェが初めて競演してそこで意気投合して友達になったそうです。

20分の短いコンサートでしたが、こんなに美味しくて良いのでしょうか。
ラ・フォル・ジュルネ万歳です。

2009年5月 6日 (水)

ラ・フォル・ジュルネ東京2009~No.251ヌーブルジェコンサート

場所を東京国際フォーラムに移し、5月4日のなんと朝9時30分からのコンサートです。
ヌーブルジェは前日の午後金沢で演奏していますから、かなりの強行軍です。
もっとも、私も同じでしたが。

今回のプログラムは、すべてJ.S.バッハです

1.幻想曲 ハ短調 BWV906
2.ソナタ ハ長調 BWV966 
3.トッカータ ト長調BWV916
4.カプリッチョ変ロ長調「最愛の兄の旅立ちにあたって」BWV992
5.トッカータ ホ短調 BWV914
アンコール フォーレ:舟歌第3番 変ト長調 Op.42

今回は、おそらく今後こんな席に座ることはできないと思うような最高の席でした。
真ん中やや左の最前列。目の前でヌーブルジェの演奏姿を見ることができました。

さあ、ヌーブルジェはいつものジャケットに、この日は黒のシャツ。お決まりのスタイルです
髪の毛に寝癖がついています。朝セットの時間がなかったのでしょうか。

1曲目は目覚ましの挨拶で、スピード感溢れた幻想曲 ハ短調でした。
金沢とは違い、ソフトペダルはあまり使わず、スタンウェイの素の音を出しています。
響きをある程度重視したロマンティックな表現。
後で気がついたことですが、リヒテルが残した演奏とテンポの設定や表現が似ているような気
がします。
インタビューでヌーブルジェはリヒテルを高く評価していると話しているので、影響を受けて
いるのかもしれません。

2曲目のソナタ ハ長調。聴いたことがなかったので、CDを探して聴きこんできました。あまり録音がなく、ようやくリヒテル盤をみつけました。
朝にふさわしい、爽やかな音楽です。ヌーブルジェの明るいタッチと、ほのかな詩情がよくマ
ッチしています。

3曲目のトッカータ ト長調では、ヌーブルジェのテクニックがいかんなく発揮されます。間近で見ると人間業とは思えないような指の動きです。
アダージョはグールドまではいかないまでも、非常にゆっくりしたテンポで奏でました。緩徐
楽章に対するヌーブルジェのアプローチのようですね。
フーガは切れ味するどく、かといって硬質ではない音で、見事でした。

4曲目のカプリッチョはバッハにしては物語の情景が浮かぶような詩情のある音楽です。
それぞれの曲の性格をよく弾き分けています。
コミカルで明るい音の跳躍。こういうのはヌーブルジェは大変得意ですね。

5曲目のトッカータ ホ短調
導入部の低音の響き。こういうのもヌーブルジェは得意です。
緊張感を醸し出すのに長けているのだと思います。
思わずぐっと引き寄せられてしまいます。
半音階的なアダージョの何とも言えぬ締め付けるような詩情も素晴らしい。
そして跳躍を繰り返す一度聴いたら忘れられない特徴的なフーガ。
グールドの乾いたノンレガートも良いけれど、ヌーブルジェのように少しペダルを踏んでやや
響かせる表現-でも決して過度にならない-も切れ味とウェットな感じが同居していて、悪くないと思います。

今回は、最初から、かなり緊張感に溢れ、聴く方も集中を要求される演奏でした。

アンコールは雰囲気をがらっと変え、なんとフォーレの舟歌です。
疲れた耳の癒しに最適な選曲でした。
びっくりするのが、もう音色がバッハと全く違います。
間近でしたので、指のタッチがよく観察できました。
指を伸ばし鍵盤をなでるような奏法です。
ピアニシモなど、本当にデリケートなタッチをしているのが良く見えました。

金沢でのモーツァルトの音ともまた違ったデリカシーです。

プロですから当然といえば当然ですが、音色を弾き分ける高い技術に感服しました。

ラ・フォル・ジュルネ金沢2009~No.233ヌーブルジェコンサート

金沢の2日目14:45から金沢市アートホールにて、ヌーブルジェ2回目のコンサートが開催されました。この日のプログラムは

1.ハイドン:ピアノ・ソナタ第47番 ロ短調 Hob.ⅩⅥ-32
2.モーツァルト:ピアノ・ソナタ第5番 ト長調 K.283
3.モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K.310
アンコール バッハ:イタリア協奏曲第2楽章

でした。

ハイドンのソナタ47番は全くなじみがなく、楽譜も持っていません。第1楽章だけiTunesストアで購入して事前に少し聴いておきました。
曲自体が非常に緊張に満ちており、おそらく、この曲が作曲された頃の「疾風怒濤」の芸術風
潮の影響を受けていると思われます。
ヌーブルジェは、前日のソフトタッチからうって変わって、第1楽章の出だしから、深く迷い
のないタッチと大きな構成力でハイドンを表現していきます。
あっという間にヌーブルジェの世界に引き込まれてしまいました。
そして、圧巻だったのはそれこそ疾風怒濤の第3楽章でした。荒れ狂う嵐のようなパッセージ
を、一点の曇りもなく、圧倒的な集中力をもって強靱に弾ききりました。
ほとんど始めて聴く曲だったにもかかわらず、息が止まりそうで、思わず唸ってしなってしま
いました。

2曲目はモーツァルトのソナタ5番です。
親しみやすい旋律とわかりやすい構造の初期の名作だと思います。
この曲も、前日よりはソフトペダルの使用が少ないようで、少しヌーブルジェらしい明るさが
出ていたと思います。
第3楽章プレストですが、決して慌てず、前日のトルコ行進曲のようにリズムをしっかり保っ
て、優雅に仕上げていました。

3曲目がこの日メインといえる、モーツァルトのソナタ8番です。
この曲は、私自身何とか弾こうと挑戦した経験があるので、すみずみまでよく知った曲です。

第1楽章アレグロマエストーソは、快適なテンポで悲壮感をよく表現していました。
ディヌ・リパッティの告別コンサートの悲痛な演奏まではいかないものの、それに近い線まで
迫っていたような気がします。
展開部がフォルテで始まったのにはびっくりしました。
そして中間の聴かせどころは、フォルテシモとピアニシモを見事に弾き分け圧巻でした。この
部分はブレンデルの演奏が秀逸と思っていましたが、ヌーブルジェは劣らないです。

第2楽章のアンダンテカンタービレは、まさにその通りで、かなりゆっくりとした歌でした。
ちょうど、サントリーホールライブで弾いたイギリス組曲2番で、プレリュードを怒濤のごとく弾
いた後、アルマンドを非常にゆっくり弾いていたのを思い出しました。

第3楽章プレストは、常識的な速度で、レガート奏法で流麗に表現していました。
劇的ではありますが、決して大げさにならない、品の良さを保った演奏だったと思います。

さて、またまたサービスでアンコールを弾いてくれました。
バッハのイタリア協奏曲の第2楽章です。
ついています。(でもなぜイタリア協奏曲だったのかは、東京に行った時判明しました)
ゆったりとしたテンポ。ペダルで響かせたロマンティックな表現です。
音の響きが天に昇っていくような感じで、そう、教会ででも聴いているような気分に陥りまし
た。実に感動的でした。

こうなったら、ぜひ第1楽章も聴いてみたいと思ったものです。

2日間、かなり前の席で聴けたこともあり、ペダリングやタッチの変化が良くわかりました。
音をソフトにしたい部分と、明瞭な音を出したい部分をはっきり弾きわけているのが良くわかりました。

ラ・フォル・ジュルネ金沢2009~NO.131ヌーブルジェコンサート

ヌーブルジェの金沢での最初のコンサートで、朝10時半の開演でした。
曲目は
 1.モーツァルト:ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 K.279
 2.モーツァルト:ロンド イ短調 K.511
 3.モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485
 4.モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331
  「トルコ行進曲付き」
 アンコール バッハ:イタリア協奏曲 第3楽章

です。

横浜から朝の飛行機で駆けつけました。
ところが、何せ世間はゴールデンウィークの真っ最中。
羽田空港の手荷物検査が長蛇の列をなしていて、定刻になってもまだ50名余も飛行機に乗れて
おらず、出発がかなり遅れてしまいました。
一応、1時間程度の余裕を見ていたので、ぎりぎり15分前に、金沢市アートホールにたどりつくことができました。

まだ、息も整わぬような状況で、ソナタ1番が始まりました。

明るい切れ味を出すのか、大阪フィルとの時のようにソフトな表現なのか、出だしのアルペジオを待ちました。

ヌーブルジェはいつものトレードマークのジャケットとこの日は濃いピンク色のシャツといういで立ち。これまたいつものようにぎこちなくお辞儀をして演奏に入ります。

出だしは、ほとんど和音に近い感じでした。表現はソフトです。やはり、モーツァルトに対すヌーブルジェのアプローチは、抑制のようです。

そして、テンポがアレグロの指示にもかかわらず、アレグレットととも言えるような、落ち着いたものでした。これは何とも意外でした。グールドほどの遅さでないものの、ゆっくりと丁寧に音楽をすすめます。

第2楽章のアンダンテは、そもそも曲自体が優しくメランコリックですから、ソフトなアプローチはピッタリでした。

第3楽章のアレグロで一気に解放されるかと思いきや、ここでもヌーブルジェは慎重。抑制を加え、確認するように音楽を奏でます。第2主題のスタカートなどは、なでるように優しいタッチです。

この曲はモーツァルトがピアノフォルテという楽器に出会って、その特徴を生かすように、まさにピアノとフォルテがめまぐるしく入れ替わりつつ登場します。その対比の妙を予想していましたが、ヌーブルジェはそれほど極端にディナーミクに変化をつけることなく、あくまでデリケートに洗練の美を表現したかったようです。

左足はほとんどソフトペダルに置かれたままで、軽くシフトさせていたようです。

2曲目、3曲目はロンドで、どちらも名作です。モーツァルト晩年の何とも言えぬ寂しさ漂うイ短調と、逆に可憐なモーツァルトらしいニ長調です。
ヌーブルジェの明るいタッチは、たぶんニ長調にピッタリだな、と思っていました。

その予想は半分当たり、半分はずれました。
確かに、ニ長調の方が私は良かったと思います。
(イ短調
の方は、相変わらず抑制されていて、もっと奔放に変化をつけても良いように感じたものです。)

でも、明るく典雅なニ長調ではなく、これまたソフトで軽やかで優しい演奏でした。ですから、タッチは粒立ちを重視したものでなく、あくまでレガートです。
今まで聴いたことのない、ソフィスティケートされた演奏で、ああ、こういうアプローチもあ
りなのか、と感心しました。

4曲目はソナタ11番「トルコ行進曲付き」で、この日のメインと言えましょう。
奇をてらわず、インテンポでまことにオーソドックスな演奏でした。
安心して聴ける、といった感じでしょうか。
トルコ行進曲は、遅くもなく、早くもなく、正確に拍を刻みます。味付けはほとんどなしのス
トレート勝負です。
ケフェレックが、過日浜離宮で弾いた時には、かなり崩しめだったのと対照的です。
ロンドの第2主題の行進の部分は、大変勇壮です。リピート後も1回目と同じに弾いていました

第3主題は、ヌーブルジェのテクニックの光ったところで、破綻なく弾けているのはもちろん
、あくまでレガートでかけめぐり、響きが浮き立ってくるようでした。面目躍如といったところでしょう。

コーダに入っても決して焦らず、最後までインテンポで堂々とした感じのトルコ行進曲でした

さて、ラ・フォル・ジュルネは、演奏時間が限られているので、アンコールに応える演奏家は少ないのですが、ヌーブルジェは2回コールされた後でアンコールを弾いてくれました。日本語で「ども、ありがとうございます」と挨拶して笑いを誘ったあと、なんと、バッハのイタリア協奏曲の第3楽章を弾いてくれました。私も大好きな曲です。

この曲も、トルコ行進曲の解釈の延長上にあるような演奏でした。
決して焦らず、かといって遅いわけではなく、リズムを大切にきざんでいました。立派!という演奏だっと思います。

初日の演奏は、インパクトこそ強いとは言えませんでしたが、安定したテクニックと落ち着いた解釈で、若いながら大人のモーツァルトであったというところでしょうか。

ヌーブルジェくらいの名手になれば、モーツァルトをびっくりするような技巧で弾ききることは簡単でしょうが、敢えて彼はそれをせず、控えめにオーソドックスな演奏を心がけているのではないかと思います。

2009年5月 4日 (月)

ヌーブルジェ@ラ・フォル・ジュルネ速報

金沢と東京でのラ・フォル・ジュルネにおけるヌーブルジェの出番が今日ですべて終了しました。

とりあえず速報です。

今回のヌーブルジェは金沢で2つ、東京で2つの有料コンサートと、東京での無料の広場コンサートと合計5つのコンサートに出演しました。
追っかけファンとしては、すべてのコンサートを聴きました。

今回、ヌーブルジェはさまざまな個性を演出してくれました。

デリカシーの極地だったモーツァルトのロンド二長調、ベートーヴェンのような劇的な緊張感に満ちたハイドンのソナタ、バッハのトッカータの対比のすばらしさとフーガの推進力、そして、バッハ・ブラームスのシャコンヌの左手だけによる圧倒的な演奏、さらに広場コンサートでの小曽根真との即興演奏。

ヌーブルジェはすべての有料公演でアンコールも弾いてくれ、サービス精神もたっぷりでした。

金沢では、朝、他の演奏者とともに、会場外に用意されたテーブルで談笑するなど、大変リラックスムードでした。

Neuburgerkanazawa

細かい情報は、後日アップしようと思います。

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