最近のトラックバック

« 【動画】ショパン:エチュード Op.25-12 | トップページ | ヌーブルジェ・リサイタル@ラ・フォル・ジュルネ金沢(2009/5/2)【情報1】 »

2009年3月14日 (土)

アンヌ・ケフェレック・リサイタル@浜離宮朝日ホール

3月12日(木)に築地の浜離宮朝日ホールにて、アンヌ・ケフェレックのピアノリサイタルを聴いてきました。

【前半】
モーツァルト:
 1.ピアノソナタ第11番 イ長調(トルコ行進曲付き) K.331
 2.幻想曲 ハ短調 K.475
 3.ピアノソナタ第14番 ハ短調 K.457
  
【後半】
ショパン:
 1.ノクターン第19番 Op.72-1
 2.ノクターン第20番 嬰ハ短調 (遺作)
 3.幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66
 4.子守歌 変ニ長調 Op.57
 5.舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
 6.バラード第4番 ヘ短調 Op.52

【アンコール】
 1.ヘンデル:メヌエット
 2.J.S.バッハ/ブゾーニ:コラール前奏曲「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」BWV639

ケフェレックも昨秋のル・ジュルナル・ド・ショパンで初めて聴き、ヌーブルジェの次に気に入りました。
かなり昔から知ってはいたのですが、たまたま聴く機会がありませんでした。

その時はショパンの晩年の名曲を軒並み弾いて、どれも叙情的で艶やかで素晴らしかったので、この日のリサイタルでもう一度聴いてみたいと思ったのでした。(お値段がリーズナブルであったせいです)

前半のモーツァルトのまずK.331。
とてもデリケートでニュアンスたっぷりでした。音はレガートでソフトです。
ただ、古典的な端正さは、幾分崩れており、好き嫌いがあるのではないでしょうか。
ケフェレックはフレーズをひとまとまりとして、かなり一気呵成に弾くきらいがあります。
そうすると、フレーズとフレーズの間に微妙な間隙ができます。
これが、ショパンの場合だと、音楽的に自然に聞こえるのですが、モーツァルトだと、音楽の推進が一旦とぎれてしまうような印象を受けます。
続けて弾かれたK.475とK.457は、曲の性格が331よりはるかに自由なので、ケフェレックに良く合っていたと思います。
18世紀の段階でこれだけロマンティックな曲が書けてしまったモーツァルトが凄いとも言えます。

後半のショパンは、すべて続けて弾かれました。
これは、ショパンの若い頃から順に、晩年の名作へと、明確な意図をもった企画がわかります。
年代順からはずれて、バラードが最後なのは、終わり方が一番しっくりくるからではないでしょうか。(勝手な想像です)

私は後半の3曲はル・ジュルナル・ド・ショパンで聴けたので、この日は前半の3曲に注目していました。

ノクターン第19番は、やや早めのテンポです。
テーマの再現は、かなり劇的に弾かれるものですが、ケフェレックは決して熱くならず、しっとりと弾きました。
左手のテンポ・リズムはかなり揺れており、かなりゆらゆらしたノクターンでした。
ヌーブルジェのCDにこの曲があります。
すでにブログで書きましたが、ヌーブルジェは左手のリズムはしっかり保って弾きます。
そして、ゆっくりと聴かせ、再現部は大変激情にあふれています。
ケフェレックとはとても対照的な演奏です。

ノクターン20番は、映画「戦場のピアニスト」のテーマ音楽で、昨年、フジテレビのドラマ「風のガーデン」のエンディングのテーマにも使われ、最近有名です。
たいへんゆっくりとした緊張感のある出だし。
しかし、テーマに入ると、伸びやかな感じに変わりました。中間部は早めのテンポでテーマと対照させてました。
終結部のスケールの上下も比較的あっさりめ。
抑えている印象でした。

幻想即興曲は、相当手垢のついた曲です。
しかし、名手にかかると、素敵に蘇ります。
ただ、やはりこの曲も抑え気味に聞こえました。

どうも、この日はホールの響きがイマイチのような気がしました。
ル・ジュルナル・ド・ショパン(オペラシティ)でのケフェレックの音は、もっと艶やかで、甘い色気がありました。
ホールのせいなのか、聴く位置(ル・ジュルナルは真正面、この日はやや右)のせいなのか、それともケフェレックの調子のせいなのか・・・

後半3曲は、ル・ジュルナル・ド・ショパンで一度聴いているので、比較ができます。
ル・ジュルナル・ド・ショパンでは、子守歌のグラスハーモニカのようなきらめく音や、パッションあふれるバラード4番が非常に印象的でした。
この日も、その片鱗はありましたが、やや音がこもり気味で前に出てこないのが、少々残念でした。
聴衆の反応にもそれがあらわれていて、ル・ジュルナル・ド・ショパンでは、ケフェレックが弾き終わると相当激しい拍手がわき起こったものですが、この日は反応も演奏同様おとなしめでした。

かといって、冴えない演奏というわけではありません。
最近の若い弾き手に多い、客観的で機械のような演奏に比べれば、情緒と詩情にあふれ、心が温まるような演奏です。
テクニックあふれたピアニストだと(ヌーブルジェもそうです)、音の輪郭をくっきりと、一音一音が全部聞こえるように弾いて、それが流行のような感がありますが、ケフェレックはあくまで音楽を固まりとして表現しようとしているように思います。
スケールなどは、とにかくレガートです。そして、フレージングを重視しているようです。

さて、ちょっと気になったのは、最後のバラードが終わったときの表情が、幾分こわばって見えたことです。
少しミスもあったので、もしかすると本当に体調が万全ではなかったのかもしれません。

実はこの日、私はアンコールが一番気に入りました。
ヘンデルのメヌエットは初めて聴きましたが、なぜかここから音が少し前に出てきて、ケフェレックもリラックスしていて、とても素敵でした。
バッハ/ブゾーニのコラールもたいへんしっとりロマンティックで良かったです。

全体的にはいたずらに緊張感を強いられることなく、穏やかな演奏会だったと思います。
値段もS席で5500円とリーズナブルで、こういうレベルの音楽がこのお値段で聴けると、大変嬉しいかぎりです。

« 【動画】ショパン:エチュード Op.25-12 | トップページ | ヌーブルジェ・リサイタル@ラ・フォル・ジュルネ金沢(2009/5/2)【情報1】 »

他のピアニストの記事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1169149/28620498

この記事へのトラックバック一覧です: アンヌ・ケフェレック・リサイタル@浜離宮朝日ホール:

« 【動画】ショパン:エチュード Op.25-12 | トップページ | ヌーブルジェ・リサイタル@ラ・フォル・ジュルネ金沢(2009/5/2)【情報1】 »

twitter

2016年5月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ