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2009年2月18日 (水)

静寂の美~大阪フィル定期公演&ヌーブルジェ鑑賞記

ヌーブルジェがコンチェルトのソリストとなるコンサートを先ほどまでサントリーホールで聴いてきました。

今回の収穫は「静寂の美」を体験できたことです。
貴重な体験を今日は2回も経験しました。

最初はヌーブルジェがアンコールでドビュッシーの「月の光」を弾き終わったとき。
2度目は、大植英次が大阪フィルでアンコールでチャイコフスキーの組曲第4番「祈り」を振り終わったとき。

ヌーブルジェのドビュッシーはそれは美しいものでした。

モーツァルトとは明らかにタッチが違います。モーツァルトはソフトな優しいタッチだったのに、今度は透明感あるソリッドな音に変えてきました。指の格好が良く見えました。ドビュッシーでは指関節を伸ばして弾いていました。

特に弱音は、消えるか消えないかぎりぎりの絶妙なタッチで、美音の極地でした。

ヌーブルジェは「月の光」最後の音を弾き終わると、そっと力を抜き手の位置は保ったまま。
音の余韻がかすかに響きます。聴衆はまだ息を殺しています。
余韻が完全になくなり、音が途絶えてもヌーブルジェはまだ微動だにしません。
聴衆の息が止まり、完全な静寂が訪れました。ヌーブルジェと聴衆の思いがひとつになった瞬間でした。
実際は10秒もなかったと思いますが、体感では15秒くらいにも感じます。
ヌーブルジェが手をおろし、そこで、やっと大きな拍手。
感動的でした。

大植英次はマーラーで完全燃焼した後、チャイコフスキーをそっと振り出しました。
この時、私はチャイコフスキーとは知らず。
メロディーは、モーツァルトの歌曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス」そのものでしたので、それの編曲ものなのだろうか?などど。
原曲の雰囲気をほぼ保った、静かで厳かな曲です。

そして、これまた静かに終わり、大植英次は手を止め、音楽もしばしの余韻を残して消えますが、まだ手はあがったまま。
聴衆は、またまた息をひそめています。
5秒、10秒、大植英次がゆっくり、ゆっくり手を下げていきます。
その間、完全な静寂が続きます。
聴衆の息が止まります。
今度は本当に15秒くらいあったのではないでしょうか、完全に脱力して手が下がりきったところで、大きな拍手の渦が巻き起こりました。

静寂もまた音楽の一部なのだということを体感することができました。

いきなり、アンコールの話をしてしまいました。
本プログラムも実にすばらしいものでした。

ヌーブルジェが弾いたモーツァルトのピアノ協奏曲第9番「ジュノム」は、モーツァルトの初期の名作です。
透明で明るく、キレのある演奏を予想していました。
しかし、予想ははずれました。
柔らかく優しく、ロマンティックなモーツァルトでした。

3楽章など、リズム感に溢れた、はじける演奏かと思っていたのですが、これもソフトで流麗といった趣。その点は少し拍子ぬけではあったのですが、第2楽章や、第3楽章のメヌエットなどの、ゆっくりした部分のソロが実に情感たっぷりで素晴らしかったです。

特に第2楽章のカデンツァは、少し音をクリアにして、ゆっくり、しっとりと、彼特有の「間」を大事にした演奏です。
カデンツァから、オケに引き渡す直前のハーフタッチのトリルの美しさといったら、この世のものではないような美しさでした。

案の定、このあたりで泣きです。

指揮の大植英次は、ヌーブルジェがソロの時も、上からのぞき込むように注視し、音楽の雰囲気に合わせて、顔の表情を千変万化させたものです。
心から音楽を楽しんでいるのが感じられました。
ヌーブルジェとの息もぴったり。
こちらも弦の弱音が美しい、ソフトな伴奏でした。

プログラム後半のマーラー交響曲第5番は、私は初めての曲でした。マーラー自体初めてです。そもそも、交響曲自体、あまり聴かない人です。
なので、感想は多分に初心者的です。

長くて持つだろうか?という不安をよそに、出だしから身を乗り出すくらい楽しく、結構集中して聴くことができました。

大植英次は、かなりオーバーアクションですが、素人目には実にわかりやすい指揮で、オーケストラが彼の身振りや、表情そのままの表現をするので、一体感があって、とても良かったと思います。指揮者を1度やったらやめられないと言いますが、こんなに自在に操れるなら、そうなのだろうな、と思わせるような一体感でした。

それにしても、こんなに情感たっぷりな指揮者はなかなかいないのではないでしょうか。
交響曲になじみのない者としては、十分楽しめました。
ただし、ピアノの場合、オーバーアクションのピアニストは、あまり感心しないことが多いので、その点、気になるところです。

とにかく、さすがに長くて疲労困憊でした。

音楽は複雑なので、1回聴いたきりでは、とても覚えきれません。
いったいテーマがいくつ出てくることやら、って感じでした。

気に入ったのは、第3楽章の大植が踊っていたスケルツォや、第4楽章のハープが美しい静かな演奏、第5楽章の華やかな演奏などでしょうか。

聴衆もみるからに楽しそうに、笑みを浮かべて聴いている人が何人もいて、とても良い雰囲気でした。終わると、ヌーブルジェの時以上に沸き、ブラボーの嵐でした。

(後で知ったことですが、この演奏は通常の演奏よりとてつもなく遅く、マーラー通の方々の間では賛否渦巻いているようです)

ちなみに、このコンサートの模様は、4月26日(日)にスカイパーフェクトTVの「クラシカ・ジャパン」で放映される予定です。

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ヌーブルジェコンサート鑑賞記」カテゴリの記事

コメント

tomyamさま

コメントありがとうございます。
マーラーでオケも聴衆も燃え尽きていたので、まさかアンコールがあるとは思いませんでした(^-^;
モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスのメロディで、やっと私の知っている音楽だったのでほっとはしました。

ヌーブルジェは違う曲だったのですね!

こちらでは初めまして。当方にコメントを残してくださってありがとうございました。
ところで、サントリーホールでの演奏をお聴きになられたのですね。オケのアンコールもあったんだ……。いいなぁ(笑)。私が聴いたのは大阪での2日目の演奏で、オケのアンコールは残念ながらなかったのです。(ちなみに、ヌーブルジェ氏のアンコール曲は「プレリュード」でした。)

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